有痛性外脛骨障害の原因と対処法、早期復帰のためのセルフ施術もご紹介!
カテゴリー:脚の痛み
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お子さんが運動後に下記の症状を訴えていませんか?
- 体重をかけると足首周辺が痛い…
- 足首内側の出っ張りを押すと痛い…
- つま先立ちが出来ない…
その痛みは【有痛性外脛骨障害(ゆうつうせいがいけいこつしょうがい)】かもしれません。
痛みの原因と対処法を知っていただき、少しでも早く痛みを楽にしてあげていただければと思います。
Contents
有痛性外脛骨障害(ゆうつうせいがいけいこつしょうがい)とは?
外脛骨とは足の舟状骨という骨の内側に存在する過剰骨(普通にはない余分な骨)で、15~20%の人に認められます。多くは骨の出っ張りがみられるだけですが、これに痛みを伴うような病態を有痛性外脛骨と言います。
成長の過程で舟状骨と一体になる骨がくっ付かずに、別々に分離して形成された骨(外脛骨)が後脛骨筋腱との炎症により痛みを出してしまうのです。
青い筋肉が後脛骨筋、黄色丸が痛みの出る箇所です。
小学生の高学年から中学生の成長期の時期に多いとされています。
外脛骨は15%の人にあると言われていて、外脛骨があるのが異常ではなく、過剰な負荷により後脛骨筋腱との摩擦で外脛骨と舟状骨の間に炎症が起きるのがそもそもの原因となっています。
外脛骨はタイプ別に分類されていて
タイプ1:外脛骨が腱の内側にあり、舟状骨とは離れている
タイプ2:舟状骨と繊維で結合している
タイプ3:舟状骨とつながっている
となっていて、タイプ2が最も痛みを出るタイプとわかっています。
外脛骨が炎症を起こしてしまう原因
ではなぜ炎症が起きてしまうでしょうか。
炎症が起きる原因には
- 扁平足
- 足首の捻れ運動(ニーイントゥアウトも含む)
- 内反足
- 靴が小さい
- 打撲や捻挫によるもの
が考えられています。
扁平足(へんぺいそく)により舟状骨に付く腱が、荷重により引っ張られて過剰な負荷が加わると摩擦を生じて炎症を招きます。
ジャンプ動作の多い競技では、足首の動きと負担が大きいために症状が出やすい傾向にあります。
足首の捻れも同様で、サッカーやバスケットのような切り返し動作の多い競技ではつま先着地からの方向転換で足首にねじれを生じて外脛骨と後脛骨筋腱に炎症が起きてしまいます。
女性に多い「ニーイントゥアウト」の動作時にも足首には捻れが起き、内反足でも同様に足首に捻れが生じて炎症を起こしてしまいます。
左(上)が正常な足、右(下)が内反足で内側に足首が入ってしまっている。
靴が小さいと外脛骨の箇所に靴が当たって痛みを誘発してしまいます。
打撲や捻挫から始まる痛みも同様の考え方となります。
炎症により患部には血管を増殖して早い組織の修復がなわれますが、時に修復時に作られた血管が異常に増えてしまってしまい、痛みを長かせることもわかっています。
サッカーやバスケット選手がなりやすい理由
有痛性外脛骨障害になりやすい競技としてサッカーやバスケットが多く、理由としては
- 競技としてつま先荷重の動作が多い
- 筋力が少ないためにニーイントゥアウトになりやすい
- 成長期で骨格がまだ未完成にも関わらず負荷が強い
- 靴のサイズが足より大きい、または少しキツイ
によるものがほとんどです。
成長期の選手個人に合わせた負荷の練習設定ができないことも要因となっています。
指導者の方は成長期に合わせた動きの要求を選手にはして欲しいものです。
有痛性外脛骨障害の症状
有痛性外脛骨障害の症状には
- 押すと痛い
- 熱感や腫れがある
- つま先立ちで痛い、つま先立ちで親指に体重をかけると痛い
- 症状が強い時にはじっとしていても、寝ていても痛い
『痛みはいつからあったの?』と患者さんに聞くと「前から押すと痛かったり、運動する時間が長いと痛みは感じていた」とおっしゃる患者さんがほとんどです。
運動量が多い時期に痛みを訴えて来院する患者さんが多い傾向にあります。
有痛性外脛骨障害に効果的なストレッチ
有痛性外脛骨障害に効果的なストレッチをご紹介いたします。
後脛骨筋(こうけいこつきん)が硬くなると、外脛骨を引っ張ってしまい痛みの原因となりますのでアプローチすべきは後脛骨筋です。
- 膝を曲げて足首を立てる
- 足の裏を持って小指側を上げながらつま先を外に開く
- 気持ち良さを感じる間行う
ストレッチは痛みを我慢しながら行うとかえって筋肉を硬くしてしまいます。
筋肉を柔らかくする目的で行うストレッチは、必ず気持ち良さを感じながら行いましょう。
気持ち良さが感じにくい時には伸びている感覚を味わって行ってください。
ストレッチの方法についてはこちらをご覧ください。
→間違ったストレッチをしないために、知っておくべきこととは?
有痛外脛骨障害はサポーターで緩和
有痛性外脛骨障害になってしまう原因の一つに《足首の捻れ》がありました。
足首に捻れが生じると後脛骨筋の緊張が強くなり、緊張が強くなると外脛骨との摩擦も起きやすくなって、ついには炎症を起こしてしまいます。
足首の捻れを予防するにはサポーターがオススメです。
テーピングも良いのですが、毎日テーピングを貼ると皮膚がまけてしまいますので、継続的な固定が必要な時にはサポーターが良いでしょう。
オススメするサポーターはこちらの記事にてご紹介していますのでご覧ください。
→腓骨筋腱脱臼は保存療法とサポーターで対処!手術はどんな時に必要?
有痛性外脛骨障害のテーピングの貼り方
有痛性外脛骨障害は運動をしている方が多く抱えやすい障害ですので、スポーツにも適したテーピングの貼り方をご紹介いたします。
ポイントは
- 扁平足のサポート
- 回内足と足関節の捻れの予防
- つま先荷重のサポート
この3点です。
テーピングは上から順番に使用し、サイズは
幅3,8ミリを38センチ、
幅5,0ミリを17センチ、
幅5,0ミリを30センチ、
幅3,8ミリを44センチとなっています。
ちなみに私の足は24,5センチです。
では進めていきましょう。
1:後脛骨筋に沿って痛いところから膝の内側まで貼る
テーピングを貼っているラインが後脛骨筋の通っているところです。
2:扁平足のサポート
テーピングを貼る際の足首は90度で貼り、少し引っ張って貼るとより扁平足のサポートになります。
3:回内足防止のテーピング
両側より同時に引っ張って貼ると簡単に貼れるでしょう。
4:足関節に捻れ防止のテーピング
有痛性外脛骨障害は立ち仕事に多い?
有痛性外脛骨障害は立ち仕事に多い理由には
- 立っている時の荷重が内側にかかっている
のが大きな原因となっています。
荷重が内側にかかると足首は捻れ、扁平足が誘発されます。
仕事なので、一日の立っている時間も長く、足首周辺とふくらはぎの筋肉群の休まる時はありません。
ふくらはぎの筋肉群には後脛骨筋も含まれていますので、負荷がかかり続け、緊張が強くなると外脛骨との摩擦が強くなって炎症を生じてしまうのです。
尚且つ靴が職場より支給されているものだと足に合わないこともしばしば。
立ち仕事とはいえ、足に合わない靴を履き続ければ何かしらの不具合が出てきてもおかしくありません。
靴が足に合わない時にはインソールで少しでも足への負担を軽減すると良いでしょう。
有痛性外脛骨障害にインソールがおすすめな理由
有痛性外脛骨障害にはインソールがオススメです。
インソールをお勧めする理由には
後脛骨筋の筋活動が低下することと、舟状骨パットが内側縦アーチを保持することが、外脛骨に対しての機械的ストレスを軽減させ、疼痛 を軽減及び消失させたと考えられた。さらに、踵骨の過度な回内を制 限するために、踵骨内側部に中足骨パットを用い、踵骨を直立化し、さらに後足部からのアーチの崩れに対する安定化を図ることが できた。
有痛性外脛骨障害に対する足底挿板療法について:第37回日本理学療法学術大会 第29巻大会特別号 No.2 : 演題抄録集
このように論文でも認められているのです。
足底挿板を靴底に入れるものとして改良されたものがインソールになります。
【シダス社】のインソールは、様々な場面に対応可能なバリエーションとトッププロスポーツ選手も使用している実績があり、厚みも選べるところもお勧めするポイントです。
シダス公式HP→https://sidas.co.jp/
こちらは切り返し動作の多いスポーツにオススメのインソールです。
私はシダスのインソールを愛用してから9年になりますが、それまではインソールのない靴を履いての運動や長時間の歩行をすると翌日には足首が痛くなっていました。
ですが、インソールを装着した靴を履くと、翌日から感じていた痛みが出ないのです。
12年前の捻挫の後遺症による回内足と足首の捻れがサポートされているのでしょう。
運動の際や長時間歩く時には必ずインソールの入った靴を選んで履くように気をつけています。
有痛性外脛骨障害に限らず、扁平足や回内足にはとてもオススメのインソールですので、足に何かしらの不具合を抱えている方は是非ともインソールの効果を体感していただければと思います。
有痛性外脛骨障害で手術の適応になる場合とその手術内容
有痛性外脛骨障害で手術の適応になる場合は
- 保存療法でも変化がみられない
- 再発を繰り返す
場合となっています。
安静と注射での保存療法では3〜4ヶ月ほど経過をみることもあるのですが、長い場合には半年以上のことも。
半年以上も保存療法で変化のない場合や再発を繰り返す場合には手術が選択されます。、
手術方法には
- 外脛骨の除去
- カテーテルにより異常に増えた血管の死滅
保存療法で変化のない場合には、痛みの原因となっている外脛骨の除去手術が行われます。
手術後は3週間のギプス固定後より、4週目から荷重開始、6週目で全荷重、8〜10週ほどでスポーツ復帰が望めるでしょう。
後脛骨筋腱との摩擦の原因である外脛骨を除去すると痛みはなくなるのですが、中には外脛骨を除去しても痛みが残るケースがあります。
そのような時に考えられるのが血管の異常な増殖によるものです。
血管が以上に増えた時の患部では神経も同時に増えてしまい、神経が増えると痛みという感覚も強く感じてしまうのです。
血管の増殖による手術ではカテーテルを患部まで通し、抗生物質によって増えすぎた血管を死滅させると痛みもなくなります。
カテーテルによる手術に要する時間は30分ほどで、痛みも局所麻酔で針を刺す時にチクっと感じるだけで日帰りで受けることができます。
血管の増殖による痛みの長期化は肩や肘でも起きることがわかっています。
長期化する痛みがある場合には一度検査を受けてみると良いでしょう。
有痛性外脛骨障害に必要な理学療法
有痛性外脛骨障害に必要な理学療法には
- 後脛骨筋を緩めるマッサージ
がとても効果的で、運動療法のリハビリとして
- つま先立ち
- ジャンプ
が必須になります。
後脛骨筋が緩めば足首の動きと痛みは楽になり、つま先立ちとジャンプ動作が違和感なくできると競技復帰の目安となります。
では早速、後脛骨筋を緩めるマッサージをお伝えします。
後脛骨筋を緩めるマッサージ
「マッサージ」とは言っていますが、実際には「セルフ施術」と行って良いでしょう。
- 膝と足首を曲げて後脛骨筋を緩める
- テーピングの貼ってあるスネの骨沿いの痛いところ、硬いところを探す
- 押したまま足首を上と下に動かす
- 5回ほど繰り返す
テーピングの貼っているところのラインを指で押すと、硬くて痛いところが見つかりますので、両方の親指で押したまま足首を動かします。
足首を下にすると柔らかくなり、上にあげると硬くなるでしょう。
繰り返し行うと次第に押しているところが緩み、最初よりも深く指が入ります。
強く押しすぎると筋肉痛のような痛みが出ますので、慣れないうちは「少し痛い程度の強さ」で押しましょう。
運動療法のリハビリ
手術後、または後脛骨筋が緩むと痛みは消失、または軽減されますが、痛みを感じていた間していなかった動きがあります。
それはつま先立ちとジャンプ動作です。
有痛性外脛骨障害になると痛みでできなくなる動きですので、筋力の衰えが起きています。
競技に復帰するには落ちた筋力を取り戻す必要がありますので、筋トレが必要になるのです。
方法は至って簡単。
- つま先立ちを20回×3セット
で、つま先立ちに必要な筋力の回復を促し、
- かかとを地面に付けない、その場ジャンプ30回×3セット
にて、筋力のさらなる回復と神経系への刺激を加えます。
神経系も刺激がなくなると鈍くなりますので、競技復帰する前には神経系への刺激も必要です。
上記の動作が痛みなく、難なく出来るようになれば晴れて競技に復帰できるでしょう。
有痛性外脛骨障害になった時には
有痛性外脛骨障害に限らず、身体に不具合を感じたら我慢は禁物です。
「いつか治るだろう…」といって誤魔化すと痛みは長期化します。
適切な処置・施術を早期に受ければ、早期の競技復帰も難しくありませんので、すぐに行動を起こしていただくことを強くお勧めします。