膝蓋骨脱臼とは。原因や症状、分類や一般的な治療法について解説します
カテゴリー:膝の痛み
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膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、膝にあるお皿状の骨がさまざまな要因や膝に強い力を受けて脱臼するもので、稀ではありますが、注意しておきたい脱臼のひとつです。
ここでは膝蓋骨脱臼について、より詳しい原因や症状、一般的な治療法の解説と、疑問アレコレにわかりやすくお答えしていきたいと思います。
「脱臼」という状態について詳しくはこちら☆
→脱臼とは?状態や原因、起きやすい部位や治療法について解説します
Contents
膝蓋骨脱臼とは
膝蓋骨脱臼とは、10歳代の女児に多く発生する傾向で、生まれつき脱臼しやすい要素を持っていることもその原因のひとつと考えられています。
ここでは膝蓋骨脱臼の主な原因や症状、分類について詳しく見ていきましょう。
原因
膝蓋骨脱臼は、
- ジャンプなどの跳躍
- 飛び降り
などの際に、膝を伸ばす動作と膝関節の捻転力が同時に加わることで発生し、その際には太ももの筋肉・太腿四頭筋(緑丸)が強く収縮したことが原因で生じます。
膝蓋骨脱臼が初めて起きる年代は10歳代の女児に多く、その後、繰り返しの脱臼のことを言う「反復性脱臼」を20~50%の確率で生じてしまう傾向です。
「反復性脱臼」を生じやすい肩関節についてはこちらから。
→肩関節脱臼について。状態や原因、整復方法や治療法を解説します
膝蓋骨脱臼はその他にも、
- 生まれつき脱臼しやすい素因を持っている場合
- 膝蓋骨や大腿骨の形に異常がある場合
- 太腿四頭筋が働きかける方向と膝蓋靱帯の方向が異なっている場合
などの原因もあり、関節面の一部が骨折するケースもめずらしくはありません。
脱臼と骨折が併発する「脱臼骨折」についてはこちら。
→脱臼骨折とは?原因や症状、脱臼骨折が起こりやすい部位を解説。
症状
膝蓋骨脱臼はほとんどの場合、膝蓋骨が外側に脱臼した状態となり、
- 膝関節の痛み
- 患部の変形
- 皮膚の腫れ
- 熱感
- 膝や足をスムーズに動かせない、曲げ伸ばしができない
などの症状が出ます。
膝蓋骨脱臼を繰り返すと、初回の時のような痛みや腫れなどは少なくなり、膝蓋骨とそのまわりの不安定感が強く出るようになるでしょう。
膝が腫れる障害は脱臼の他にもあり、こちらの記事も参考にご覧ください。
→オスグッドが治らない理由は?オスグッドに関する疑問にお答えします!
分類
膝蓋骨脱臼には、主に3つの分類があり、それぞれに治療法が異なっています。
- 膝関節がどの角度においても、膝関節の関節面が太腿骨の関節部分と接触せず、膝蓋骨が脱臼位にある「恒久性膝蓋骨脱臼」
- 膝関節がある角度になると必ず脱臼を生じるもの。通常は膝を伸ばすと正常な状態にあり、膝を曲げる角度がある程度になると脱臼する「習慣性膝蓋骨脱臼」
- 通常関節は適合しているものの、外傷などにより繰り返しの脱臼が起こる「反複性膝蓋骨脱臼」
どの分類においても、そこまで頻発する脱臼ではありません。
脱臼が起きやすい鎖骨の脱臼も参考にご覧ください。
→肩鎖関節脱臼とは?原因や分類、リハビリや治療法など詳しく解説。
膝蓋骨脱臼の一般的な治療法
膝蓋骨脱臼の一般的な治療法には、
- 保存療法
- 手術療法
があります
保存療法では
- 装具の使用
- 筋力トレーニング
- ストレッチ
などが行われ、
手術では
- 腱の再建
- 腱を抑える役割である「支帯」の解離術
- 支帯の縫合
などが行われます。
膝蓋骨脱臼が繰り返されると、
- 膝蓋骨の軟骨
- 大腿骨の軟骨
に損傷を生じやすくなることから、手術の適応・方法は膝蓋骨脱臼の状態や年齢によってさまざまな方法が選択されるでしょう。
膝蓋骨が関係する障害には「ジャンパー膝」というものがあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
→ジャンパー膝の痛み・症状とは?治療・リハビリ方法も徹底解説
膝蓋骨脱臼にオススメのサポーター(装具)
膝蓋骨脱臼にオススメのサポーター(装具)は、身近なインターネット通販からも手軽に購入できます。
サイズには注意して購入しましょう。
サポーター(装具)を使用する目的は
- お皿の固定
- 膝関節の固定(動いてはいけない方向の制限)
- 筋力不足のサポート
を目的に選ぶと良いでしょう。
【エクスエイドニーオスグッド】
こちらのサポーターは初めての膝蓋骨脱臼で、再脱臼を最小限の固定で補うことが可能です。
「オスグッド」と書いてはいますが
- 膝の動きの制限とサポート
- 膝蓋骨の固定
が同時に行えるものでもありますので、膝蓋骨脱臼後に使用するには最適のサポーターの一つです。
【エクスエイド ニーライトスポーツ2】
こちらのサポーターはスポーツ選手向けで、膝の動きのサポートはもちろん、太ももの前の筋肉である大腿四頭筋のサポートを強力に補ってくれます。
膝蓋骨脱臼は大腿四頭筋と密接に関わっていますので、相性もバッチリです。
《スポーツ一生懸命したいけど、もう二度と脱臼もしたくない!》という方はこのくらい強力なサポーターを使用した方が良いでしょう。
白石接骨院いとうオススメのサポーターに関する記事はこちら。
膝蓋骨脱臼後の筋力トレーニング
膝蓋骨脱臼後は固定や動きの制限により、大腿四頭筋が著しく低下します。
そのため、運動に復帰するには大腿四頭筋の筋力回復が必須で、もし筋力が戻らない状態でスポーツを行うと
- 膝に力が入らない(膝がカクン、と勝手に曲がる)
- ジャンプ着地の際に再脱臼してしまう
- 膝関節への余計な負担を増やしてしまう
ため、必ず筋力回復のトレーニングを行いましょう。
一番簡単で、手軽に行えるのはスクワットで、方法は
- 肩幅に足を開く
- つま先より膝を出さないように膝を90度くらいまで曲げる(トイレに座る意識で)
- 曲げた膝とつま先の向きは同じ
- 20〜30回ほど行う
注意すべきは【曲げた膝とつま先の向きは同じで、つま先より膝を出さない】ことです。
ニーイン(膝が内側に入ること)の姿勢で、つま先より膝が出ると膝への負担はさらに増えてしまいます。
行う回数も徐々に増やしていき、最終的にはジャンプするようにスクワットを行えると理想的でしょう。
膝蓋骨脱臼の疑問アレコレ
続いては、膝蓋骨脱臼の疑問アレコレにわかりやすくお答えしてみたいと思います。
スポーツ復帰まではどのくらい?
膝蓋骨脱臼を生じてから、スポーツに復帰できるまでには、
- 膝の痛み
- 腫れ
- 運動制限
が消失し、本来の筋力が回復してからになり、通常2ヶ月以上が目安になります。
膝蓋骨脱臼で手術を受けた場合は、手術の方法によってスポーツ復帰までの目安が異なるものの、通常3~6ヶ月程度での復帰が望めるでしょう。
手術後の生活と経過は?
膝蓋骨脱臼の手術後は、
- 手術の翌日より車いすの移動
- 手術から2日後に松葉杖を使って、足を軽くついてあるく歩行訓練の開始
となり、術後は10日目くらいで退院できるのが一般的です。
膝蓋骨脱臼を繰り返している場合は筋力が低下していたり、動きの改善が必要となります。
筋力はリハビリによって回復し、動作の習得にも時間を費やしながら、スポーツの復帰を目指しましょう。
リハビリの内容は?
膝蓋骨脱臼のリハビリには、股関節まわりの筋肉や太腿の筋肉の筋力強化を図るリハビリがメインとなるでしょう。
また太腿の筋肉・太腿四頭筋の中でも、特に内側広筋に意識を向ける太腿四頭筋筋力訓練が行われるでしょう。
同時に身体の使い方、例えばニーインの動作がくせとなっている場合にも、膝のさまざまな障害を予防する意味でも動きの修正も必要です。
ニーインになると下記の障害を招いてしまいます。
テーピングの巻き方
膝蓋骨脱臼のテーピングは、次の手順が最も簡単な方法です。
使用するテーピングのサイズは75ミリとなります。
- 膝を軽く曲げて、太ももの前から膝に向けて貼る
- お皿をY字に切った部分で膝蓋骨を囲む
より強くサポートが欲しい時は2の時に、少し引っ張りながら貼ると固定力が強くなります。
ただ強く引っ張りながらテーピングを貼るとヒフに水膨れができたり、痒みが出ますので注意も必要です。
テーピングを上手に貼る方法はこちらを参考にご覧ください。
→テーピングの効果って?効果を最大限活かすための注意点と疑問アレコレ
【まとめ】膝蓋骨脱臼について
本記事では膝蓋骨脱臼の原因や症状、一般的な治療法などについて解説してきました。
膝蓋骨脱臼は日常的にスポーツをしている10代に生じやすい傾向にあるため、親御さんも一緒に原因や症状、治療法などを理解し、万が一の際に備えていただければと思います。