後十字靭帯損傷の症状について、アスレチックトレーナーが詳しく解説!
カテゴリー:膝の痛み
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後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)は、
緑矢印が【後十字靭帯】、赤矢印が【前十字靭帯】です。
太ももの骨はわかりやすいように載せていませんが、後十字靭帯は太ももの骨が後に行かないよう(すねの骨は前に行かないように)に付いていて、前十字靭帯は太ももの骨が前に行かないよう(すねの骨は後ろに行かないように)に付いています。
ここでは後十字靭帯損傷の症状について、原因や治療法、リハビリなどを詳しく見ていきましょう。
Contents
後十字靭帯損傷の症状とは
後十字靭帯損傷の症状には、急性期(受傷後すぐ)と慢性期(受傷後の症状が落ち着いてから)では違いがあり、
急性期では
- 完全断裂の場合、受傷後は動けなくなるほどの激しい痛みが出る
- 徐々に熱感、内出血、腫れが出てくる
- 膝を曲げる伸ばす際に強い痛み
- 歩ける場合には、膝に不安定感を感じる
慢性期には
- 運動時に膝の痛み、ゆるみや不安定感を感じる
- 運動のたびに関節が腫れる
などがあります。
後十字靭帯損傷を生じると、
そのためにも、画像検査は必ず受けるようにしましょう。
→変形性膝関節症の原因と将来ならない為に今すぐにでもすべきコト
後十字靭帯損傷の原因
後十字靭帯損傷は、
- 事故ですねの骨を前方向から強くぶつけた
- ラグビーなどのコンタクトスポーツで、すねの骨の前面がぶつかった
などがほとんどです。
後十字靭帯損傷の治療法
後十字靭帯損傷は症状の経過によって治療法が異なります
ここでは後十字靭帯の治療法について、
- 痛めてすぐ
- 腫れが落ち着いてきたら
- 腫れが治ってきた際
それぞれの治療法について見ていきましょう。
痛めてすぐ
後十字靭帯損傷で受傷後すぐの段階では、
後十字靭帯損傷の保存的治療には、
- RICE(ライス)処置
- 膝に溜まった血腫を除去する
がとられ、サポーターや包帯による固定などを行います。
ケガに対する処置として、必ずと言って良いほど行うRICE処置。
目的は
- 腫れや内出血の軽減
- 痛みの軽減
です。
腫れが少なければ早い段階で次の治療・施術が始められるため、早く治るには欠かせない処置です。
RICE処置について詳しくはこちらをご覧ください。
→アイシングを効果的にする方法、時間と回数、やりすぎない為の注意点
腫れが大きく出てしまった場合には、注射器にて膝関節内の血腫を抜いて対処するケースもあるでしょう。
腫れが落ち着いてきたら
後十字靭帯損傷による腫れが落ち着いてきた際の治療は、保存療法の場合では太ももからすねにかけて装具を使って固定しながらも可動域改善のアプローチや松葉杖を使っての歩行訓練が行われます。
同時に装具療法と並行しながら、
腫れが軽減してくると、靭帯の損傷具合やスポーツの有無なども考慮して手術の検討もされます。
受傷後すぐの段階では腫れが強いため、画像での検査や手術に影響を及ぼすこともあり、腫れを最小限にすることや腫れを早く引かすために固定して安静を図ります。
数日後、改めて画像検査には患部の状態を見極めながら保存療法か手術の検討がなされるでしょう。
腫れが治ってきたら
後十字靭帯損傷の腫れが治ってきた際の治療は、
- 膝関節の可動域訓練と完全荷重のための「リハビリ」
- 膝関節周りの筋肉を増やし、患部への負荷軽減を目指す「筋力トレーニング」
- 自身の血小板を濃縮活性化し、
抗炎症と修復作用のある液体を患部に注射する「PRP療法」
があります。
腫れが治ってきたら日常生活に支障のあった動作を取り戻すリハビリが始まりますが、筋力低下や固定による身体の使い方の制限のため、自分の身体が思うように動かず、かなりのストレスを感じるでしょう。
焦らずにリハビリを継続すれば以前のように日常生活には支障なく動けるようになりますので、地道に先生と進めてください。
また、保存療法にて腫れが治ってきても
- 十分な回復が見られない、
- 完全断裂で経過観察したが、予後が悪い
と判断した際には、損傷した靭帯に身体の他の部位の腱を移植して再建する「
後十字靭帯が完全断裂し、今後もスポーツを続ける方のほとんどのケースでは手術が選択されます。
後十字靭帯損傷のリハビリとは
後十字靭帯損傷のリハビリは、
- 受傷後の保存療法と並行しながら早い段階で行う
- 手術を受けた場合は手術翌日から始める
ことが一般的です。
ここでは後十字靭帯損傷の主なリハビリ内容とそれぞれの目的につ
関節可動域訓練
後十字靭帯損傷の発症後は、
関節可動域訓練のリハビリは、
- 受傷した膝関節を自動的、他動的に動かしていく
- 関節が動く範囲を維持、拡大していく
ための目的があり、患者さんが自身で行う自動運動、
痛みを伴うケースがほとんどなので、先生と一緒に相談しながら進めてきましょう。
筋トレ
筋トレによるリハビリは、膝の機能の回復と強化を図る目的があり、
後十字靭帯損傷の筋トレによるリハビリには、
- 膝を含めた全身の筋肉強化に役立つ「スクワット」
- 速度を上げて筋トレを進めていく「パワートレーニング」
- 下肢筋力向上にアプローチできる「起立・着座運動」
などがあります。
そして早く筋力をつけるには【加圧式トレーニング】がオススメです。
短時間・高負荷・しかもケガのリスクも限りなく低いため、リハビリにはとても適していて、さらに組織の修復も早めてくれる素晴らしいトレーニング方法です。
詳しくはこちらをご覧ください。
→加圧トレーニングの効果とは?実は良いことだらけなのをご存知ですか?
ストレッチ
後十字靭帯損傷のストレッチによるリハビリは、
ストレッチには主に、
- 壁に片手をついて立ち、片足の膝を曲げてつま先を掴む、
太ももの前側を伸ばすストレッチ - 床に座り、膝の裏を床につけるように伸ばすストレッチ
- 床に座り、踵を空き出すように膝を伸ばし、ふくらはぎを伸ばすストレッチ
などがあります。
全て自力で行えるストレッチですので、動かせる程度に合わせて毎日行っていきましょう。
ストレッチをより効果的に行う、誰も知らない方法はこちらをご覧ください。
→間違ったストレッチをしないために、知っておくべきこととは?
歩行訓練
後縦靭帯損傷の歩行訓練のリハビリは、
- 平行棒
- 4点杖
- 歩行器キャスター
などの器具を使うケースもあります。
ただ現在の手術の方法は以前と比べると侵襲性(身体に与えるダメージが少ない)が低いため、次の日から松葉杖ですぐに歩行訓練を始めるケースが多いです。
侵襲性が低いことと、筋力低下をできるだけ防ぐ狙いと、神経系低下を考慮して早期のリハビリ開始となります。
後十字靭帯損傷の症状についての疑問集
続いて、後十字靭帯損傷の症状に関するさまざまな疑問にお答えしていきたいと思います。
軽度の症状は?
後十字靭帯損傷の軽度の症状には、
- 歩行やしゃがみ動作、方向転換時の軽度の痛み
- 歩ける、またはスポーツができるものの膝の不安定感がある
などがあるでしょう。
後十字靭帯だけでなく、靭帯の損傷は自然治癒しないため軽度の症状では見逃してしまうケースも珍しくありません。
そして気づかずに放置をしてしまうと、次に大きな衝撃が膝へ加わると重度の状態へ移行するリスクがあるため
靭帯の損傷についてはこちら。
→靭帯損傷とは?症状や治療法、早く良くなる方法を解説します。
後十字靭帯損傷しても歩けるの?
後十字靭帯損傷をしても、程度によっては歩けることもあります。
ただ、状態によっては立ち上がれないほど強い痛みが出たり、
軽度の場合は違和感があっても歩けることがほとんどですが、中~
「歩けるから大丈夫」では、年齢を重ねると変形性膝関節症に移行してしまう場合もありますので、衝撃を受けた後から膝に何かしらの症状を感じた際には画像検査を受けることをお勧めします。
変形性膝関節についてはこちら。
→変形性膝関節症のしてはいけない運動とスクワットやウォーキングの効果
後十字靭帯損傷のテスト方法は?
後十字靭帯損傷を判断できるテスト方法は、
- 上向きで寝て、損傷している方の足の股関節を45度曲げて、
膝を90度に立てる - 検査する側は患部が動かないよう、
曲げた足の甲にお尻をのせて固定する - 膝関節の隙間に、左手の親指と人差し指で触れながら、右手ですねの骨を後方へ押し込む
- 3の動きで、すねが後方に不自然な動きがあるかないか指で完治する
こちらのテスト方法は、後十字靭帯損傷においてとてもメジャーな方法です。
どこでも確認でき、完全断裂の場合には大きくすねが後方に動くのがわかるでしょう。
軽度では明らかな動きを触知できないため、痛みの出た原因が後十字靭帯損傷が疑わしい時にはMRIにてきちんと確認した方が賢明です。
正座できないのはなぜ?
後十字靭帯損傷で正座ができない理由は、
後十字靭帯損傷は正座ばかりではなく、
無理にすると、組織を痛めてしまうため無理に行うのはやめましょう。
全治まではどのくらい?
後十字靭帯損傷は保存療法や手術、そして個人差があるものの、
- 日常生活への復帰:2~3週間程度
- ジョギングができるようになるまで:概ね3~4ヶ月
- 本格的なスポーツ復帰、完治まで:8ヶ月~1年程度
の期間がおおむねの目安となります。
ご紹介した加圧式トレーニングに加え、酸素ルームも併せて行うとさらに回復時期は早まるでしょう。
酸素ルームについて詳しくはこちら。
→酸素ボックスとは?仕組みや効果、さまざまな疑問にお答えします
リハビリで禁忌(してはいけないこと)なことは?
後十字靭帯損傷のリハビリの禁忌(してはいけないこと)には、
- 先生の指示を守らず、自己流のリハビリをしてしまう
- リハビリに決められた期間や時間を守っていない
- 痛みを我慢して無理な動きをする
などがあります。
リハビリを行っていると、朝起きたら膝が腫れていたり、昨日できていたことが痛みでできなかったりすることもしばしば起こりうることです。
その際に、同じリハビリを続けるのか、強度や回数を下げて行うのかの判断が難しいですので、先生と相談しながら進めていった方が、結果早く治るでしょう。
自己判断でのリハビリはお勧めしない理由でもあるのです。
【まとめ】後十字靭帯損傷の症状について
本記事では後十字靭帯損傷の症状、原因や
後十字靭帯損傷になってしまったらまずは検査を受け、状態や症状に合わせた治療や施術をすぐに受け、