腓骨筋腱脱臼は保存療法とサポーターで対処!手術はどんな時に必要?
カテゴリー:脚の痛み
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本日は「腓骨筋腱脱臼(ひこつきんけんだっきゅう)」という珍しいケガについてご紹介します。
足首捻挫や激しい運動をした後から外くるぶしに痛みは感じていませんか?
そのまま放置していると運動はもちろん、日常生活にも支障をきたすようになってしまうかもしれません。
「腓骨筋腱脱臼は保存療法とサポーターで対処!手術はどんな時に必要?」にて、腓骨筋腱脱臼の知識を深めていただければと思います。
Contents
腓骨筋腱脱臼(ひこつきんけんだっきゅう)とは
腓骨筋腱脱臼は、ひねることで腓骨筋腱が本来の位置からずれて、くるぶしの上に乗り上げた状態をいいます。
腓骨筋腱支帯(したい)という腓骨筋腱を固定する組織が機能を果たせず、くるぶしの上に乗り上げてしまうのです。
腓骨筋腱は青色の筋肉です。
伸筋支帯はこちら。
時に捻挫と間違われて適切な対処がされずに、痛みを長く抱えて病院に行ったところ「腓骨筋腱脱臼」と診断させることもしばしばあります。
慢性的になると腱が脱臼したり戻ったりを繰り返します。
起こる割合としては、足関節の全ての外傷の中で0.3〜0.5%と珍しいケガです。
腓骨筋腱が脱臼してしまう原因
腓骨筋腱が脱臼してしまう原因には
- 足首を強く捻った
- スキーでバランスを崩した際の急激な踏み込み
- 慢性的な捻挫による支帯と靭帯の緩み
- 先天的に腱を収める外くるぶしの溝が浅い
が考えられています。
捻挫を防ぐことが腓骨筋腱脱臼の予防になり、練習で身体の協調性のトレーニングやグランドコンディジョンを整えた上で練習を行うと予防にもつながるでしょう。
腓骨筋腱脱臼がサッカーに多いワケ
実は、腓骨筋腱脱臼がサッカーだけ多いわけではなく、他にもバスケットボールや野球、テニス、スキー競技者にもなりやすい傾向があります。
なりやすい傾向には
- つま先荷重でとっさの切り返しが多い
- つま先で踏ん張ることが多い
この2点が理由と考えられています。
相手によって動きを急に変える時の負荷が強いのと、スキーではバランスを崩した際のリカバリーの力に足首の組織が耐えきれずに腱が脱臼してしまうのです。
腓骨筋腱脱臼の症状
腓骨筋腱脱臼の症状には
- 痛めた後では外くるぶしの外側に痛みと腫れ、押すと痛い
- 歩いているときや運動の際の左右の切り返しで後足部に痛み
- 外くるぶしに不安感や何かが外れるような感覚
- 慢性の脱臼では外くるぶしに腫れ
上記の症状がみられます。
痛みを感じるところは緑丸のところです。
後足部は下記の青いラインです。
腓骨筋腱脱臼を抱えているとサッカーやバスケ、ハンドボールなどの競技では、つま先に荷重をかけると外くるぶしには何かしらの症状を感じますので、ベストパフォーマンスは難しいでしょう。
「いつか治るだろう…」と思わずに、症状がなくなるための行動をしてください。
腓骨筋腱脱臼を繰り返す理由
腓骨筋腱脱臼を繰り返してしまう理由には
- 慢性的な捻挫の繰り返し
- つま先荷重の過負荷
が考えられ、そもそもの原因である足首捻挫を治すこと、次に必要なのは捻挫になりにくくするために何ができるか、です。
捻挫予防にはサポーターやテーピングが最適でしょう。
動き方に無理があったり、効率の悪い動きがあるのなら身体の協調性を鍛える(整える)トレーニングが必要となります。
つま先荷重の過負荷には筋トレなどで筋力の強化が必要ですが、そもそもの動きに無理があるのなら身体の協調性を身に付けた方が足首にも、パフォーマンスの向上にも良いでしょう。
身体の動きに関しては選手一人での修正はとても難しいですので、指導者と共に改善していくのが最も望ましいでしょう。
腓骨筋腱脱臼は保存療法で治す
腓骨筋腱脱臼の治療の第一選択肢は「保存療法」となります。
保存療法とは【手術以外の治療法のことで、薬物療法、理学療法、運動療法、心理療法、放射線療法などが含まれます】
具体的には固定や安静、マッサージや湿布・注射、リハビリを指します。
保存療法の治療の流れとしては
- 脱臼を整復後4〜6週間のギプス固定
- 固定除去後より歩行と足首の可動域回復のリハビリ、筋トレ
- 症状と経過を見て強度を上げていく
上記の流れになります。
ギプスによる固定によって、腱を収める支帯が元どおりになるわけではありません。
痛みと腫れを最小限にするための固定と認識してください。
外力による捻挫の一回だけの腓骨筋腱脱臼であれば、固定とリハビリでも治癒に至るのですが、慢性的な捻挫の繰り返しによる支帯の緩みによる脱臼では手術の適応となるでしょう。
足首の可動域を戻すリハビリ
固定をしていると関節周辺の組織は硬くなり、足首の動く範囲が狭くなります。
足首の動く範囲が狭いままだと、ケガのリスクが高いのはもちろん、パフォーマンスも低くなってしまいます。
足首は固定をすると硬くなりやすい関節でもあるので、出来るだけ短い期間の固定と固定力にすると足関節が硬くなるのを予防できます。
固定はあくまでも患部への負担を軽減するものなので、固定力が強いからといって早く治るわけではありません。
最短の期間と固定力が早期の症状消失につながるということも知っていただければと思います。
さて、足首の可動域改善のトレーニングは
- 正座
- かかとをつけてしゃがむ
この2点です。
運動後や身体が暖まっているタイミングで行うと、早期の可動域改善になります。
方法としては、一度に多くの時間と回数を行うよりも、一度の回数や負荷が少なくても開いた時間を利用して行った方が関節には適度な刺激となり、可動域の改善は早くなるでしょう。
もちろんやりすぎには注意です。
腓骨筋腱脱臼の筋トレ
腓骨筋腱脱臼の筋トレの目的は、固定によるふくらはぎの筋力低下の回復です。
ふくらはぎの筋トレはカンタンです。
- つま先立ちでかかとを上げる
- 10〜20回×2セットから始める
回数やセット数はあくまでも目安です。
固定期間による筋力低下の程度と年齢によって調節して、最終的には写真のようにかかとを上げきりましょう。
50回×3セット出来れば筋力回復の目安にします。
始めた当初の目安は「行った翌日に筋肉痛になるくらいの強度」が望ましいでしょう。
トレーニングを行っていくうちに翌日に感じる身体への負担も楽になってきますので、強度を上げるか実際の動く動作に変えていくと次第に動けるようになっていきます。
筋肉は一度にたくさん筋トレを行ってもある程度の日数は必要ですので、焦らずに行いましょう。
2種類目の筋トレはふくらはぎの外側の筋肉へアプローチします。
ゴムを用意してください。
ゴムがなければタオルを誰かに固定してもらっても行いましょう。
- つま先にゴム(タオル)をひっかける
- つま先を外側に開く
- 10回×20セット行う
筋トレ中にくるぶしの外側に痛みが出るようでしたら回数を少なく、もしくは中止してください。
リハビリも焦って行うと痛みや症状が再発してしまいますので、状態に合った強度に調節しましょう。
腓骨筋腱脱臼の手術とその後遺症
腓骨筋腱脱臼の手術の適応は「慢性的に腓骨筋腱脱臼が認められ、痛みや腫れがある場合」となります。
慢性的な脱臼が認められる場合には、固定による対処ではどうすることもできませんので、外科的に腓骨筋腱が脱臼しないように支帯を元の状態に戻すしかありません。
腓骨筋腱脱臼の手術方法と術後の流れ
腓骨筋腱脱臼の手術は主に内視鏡で行い、術後3週間は炎症が起こる時期は痛みと腫れがありますが、経過と共に軽減していきます。
術後翌日より松葉杖を使っての荷重は可能ですが、焦って荷重や活動量が多いと症状は再発しますので指導の範囲内で動きましょう。
その後は症状と患部の状態を見ながら徐々に負荷を上げていきます。
お風呂は術後2週間経過後より患部の状態を見極めて入る時期を決めます。
それまでの間は患部を保護してシャワーになります。
仕事復帰はデスクワークの方は早くて1週後より可能で、そのほかの仕事に関しては症状と活動量を調節しながら判断していくことになるでしょう。
通院やリハビリの頻度は退院日より3週間は症状と状態の確認のため、週に2〜3回の通院となります。
スポーツ復帰の目安は痛みなく動けるのが条件となり、術後4週目頃より足首の可動域や筋力、痛みや腫れの状態をみて徐々に運動強度を上げていくことになるでしょう。
標準的な復帰時期は3ヶ月程度となっています。
手術の後遺症
腓骨筋腱脱臼の手術は概ね良好で大きな後遺症はなく、あるとすれば術後のギプス固定による足首の硬さが残る程度とされています。
脱臼を繰り返すようでしたら手術を迷わずに行った方が良いでしょう。
腓骨筋腱脱臼にお勧めのサポーター(装具)
腓骨筋腱脱臼にお勧めのサポーターについてはこちらをご覧ください。
足首への負担を軽減するとは
- 踏ん張る力をサポートしてくれる
- 足首を捻らないサポートをしてくれる
この2点は抑えておく必要があります。
当院では一度足首捻挫をして、今後もバスケットやバレーボール、ハンドボールを続ける選手には迷わずお勧めしています。
腓骨筋腱脱臼の時に貼るテーピング方法
腓骨筋腱脱臼の時に貼るテーピングの目的は
- 踏ん張った際の筋力のサポート役
- 足首の捻挫防止
腓骨筋の筋力サポートと共に、足首を固定しながらつま先に入る力を強くすることで踏ん張りが効くようになります。
足首の捻挫防止により再び腓骨筋腱脱臼になりやすい動きも制限します。
テーピングをする時期は、一度腓骨筋腱を脱臼をしてしまった方の再発予防や手術後のスポーツ復帰に向けてのリハビリの時期に貼ると良いでしょう。
是非とも習得していただければと思います。
まずは腓骨筋をサポートする貼り方です。
青色の腓骨筋の筋肉沿いに貼りましょう。
次はかかとの固定力を上げると足首の負担を軽減する「ヒールロック」という貼り方です。
- 外くるぶし上からかかとに向かって貼る
- かかとを覆うように足の裏へ
- 外くるぶしの前を通って真上に貼る
このテーピングによってつま先荷重や踏ん張り動作が楽になり、足首への負担軽減にもなります。
次の貼り方で足首捻挫の予防になります。
- 外くるぶし上から内くるぶし下に向かって貼る
- 足の裏を通過し
- 外くるぶし前を通って上に向かって貼る
この貼り方をすると足首捻挫のしやすい方向には足首が向きにくくなり、足首捻挫の予防になります。
ヒールロックとこの方法で足首を捻るケースは当院ではほとんどありません、というくらい予防になるテーピングですので、是非とも貼ってみてください。
腓骨筋腱脱臼を放置するとどうなるのか?
腓骨筋腱脱臼を放置すると足首には力が入れられず、少し運動をしただけで痛みや腫れが出るようになります。
脱臼の回数も最初の頃に比べると次第に増えていき、ある動作をすると必ず外れる、なんてことにもなりかねません。
放置は望ましいことではありませんので、一度でも腓骨筋腱が脱臼したなら、もしくは外くるぶし周辺に痛みを感じたなら適切な処置を受けた方が良いでしょう。
症状を酷くするのは簡単ですが、治るまでには時間を要します。
スポーツ選手であれば少ない期間内で早期に復帰をするには出来るだけ早く治療・施術を受けることです。
痛みは身体からのサインです。
我慢せずに治すための行動をしてくださいね。