腸脛靱帯炎になりやすい人とは?原因と症状チェック、早く治す方法をお伝えします
カテゴリー:膝の痛み
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ランニングなどの運動後に膝の外側に痛みを感じる時には、腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)の可能性が考えられるかもしれません。
腸脛靱帯炎は長距離のランニングによって発生しやすい、「ランナー膝」とも呼ばれる炎症のひとつですがしばらく休みを取ると痛みが緩和されていくため、長期化してしまうケースもめずらしくはありません。
ここでは腸脛靱帯炎になりやすい人や原因、症状のチェック、早く治す方法やよくある疑問アレコレについてお答えしていきたいと思います。
Contents
腸脛靱帯炎とは?
腸脛靱帯炎とは【ランニングなどで発生しやすく、特に陸上競技のランナーに多く見られるスポーツ障害】です。
写真:赤丸が痛みを感じるところ、緑丸の中の白いところが腸脛靱帯。
腸脛靱帯炎は、膝の外側にズキンズキンとした脈を打つような痛みが出やすく、ランニングでは着地時に体重の5倍の負荷がかかるために下り坂を走る際には特に痛みが強くなります。
腸脛靱帯炎は運動中・運動後にかかわらず痛みが出やすく、悪化すると慢性化したり、一時的に良くなってもぶり返してしまうこともあるのです。
またランニング以外に、
- サイクリング
- スキー
- 登山
- バスケットボール
のスポーツでも発生しやすく、悪化すると日常生活に支障をきたすほどの痛みが出るケースも。
腸脛靱帯炎の原因と症状チェック
腸脛靱帯炎の原因と症状チェックをそれぞれ見ていきましょう。
腸脛靱帯炎は、ランニングやアウトドアが習慣になっている人は特に気を付けておきたいスポーツ障害でもありますので、当てはまる際には腸脛靱帯炎の疑いがあるかもしれません。
原因
腸脛靱帯炎の原因は、
- 荷重
- 下肢の不自然なねじれ
- オーバーユース(使い過ぎ)
などが挙げられます。
腸脛靱帯炎はランニングやジャンプなどの膝の屈伸運動を繰り返すことで、太ももの外側にある腸脛靱帯と、膝の外側の上にある骨の出っ張りの太腿骨外側上顆(がいそくじょうか)がこすれ合うのです。(緑丸部分)
すると腸脛靱帯に接触している箇所が炎症を起こし、膝の外側にズキンズキンとした脈打つような痛みが出やすくなります。
下肢や荷重のバランスが崩れることでも同様のことが起き、腸脛靱帯炎を起こしてしまうのです。
症状チェック
腸脛靱帯炎の症状を自分でチェックするには、
- 膝を90度に曲げる
- その状態から膝の外側上部2~3㎝を手で抑える
- 膝を伸ばしていった際、痛みが誘発されるか
という流れでチェックすることができます。
また、
- ある程度の距離を走ると膝の外側に痛みが出る
- 運動中、運動後の両方に痛みが出る
- 下り坂を走る際に特に痛みを感じる
- 膝を曲げた状態から伸ばす際に痛みを感じる
などの症状がある場合は、腸脛靱帯炎の疑いがあると言えるでしょう。
腸脛靱帯炎を早く治す方法(ほぐし方)
腸脛靱帯炎を早く治す方法には、次の方法がとても効果的です。
- リラックスをしてイスに座る
- 股関節から膝の外側(緑丸)にかけて、押してみて硬いところや痛いところを探す
- 2で見つけたポイントを押したまま膝を曲げ伸ばしを20回程度する
- 押す場所をずらして2を行う
押す強さは少し痛い程度だったり、押して硬さがわかるくらいで行いましょう。
行った後に膝の症状が楽になっていれば、押すポイントが当たっていたと判断できます。
押しているところが痛くならないのでしたら、一日のうちに何度でも行って構いません。
くれぐれも強く押しすぎたり、揉みながら行わないようにしましょう。
腸脛靱帯炎を早く治すためには上記の方法以外にも、
- 患部へのアイシング
- 消炎鎮痛剤(湿布)
などを用いた保存療法も有効でしょう。
腸脛靱帯炎に必要な休養期間とは?
腸脛靱帯炎に必要な休養期間は患部の状態や治療・施術などによって異なり、当院の場合では
- 軽度:早い時には1週間ほど
- 中度:1ヶ月〜2ヶ月
- 重度:3ヶ月〜半年(ここまで長くかかる方はいらっしゃいません)
腸脛靱帯炎と診断されて湿布や運動を中止しただけでは、痛みがなくなるまでは期間を要します。
痛みを取る治療・施術に加えて、患部の組織修復を同時に行うことで痛みは早期になくなり、競技復帰までが短くなるのです。
病院に行って電気や湿布、痛み止めの服用だけでなく、きちんと患部・患部周辺にアプローチしてくれる先生に任せたほうが良いでしょう。
骨を早く治す方法と腸脛靱帯炎の症状へのアプローチ方法は大きく違いはありません。
関連記事としてこちらの記事もご覧ください。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
腸脛靱帯炎の治療法
続いては腸脛靱帯炎の主な治療法について見ていきましょう。
安静
腸脛靱帯炎はランニングやステップワークなど、膝の外側に負荷がかかる動作を中止し、安静期間を設けることが原則です。
まずは【炎症を抑えるために何ができるか】です。
炎症を抑える方法として安静はもちろん、アイシングもとても効果的ですのでこちらの記事もご覧ください。
→アイシングを効果的にする方法、時間と回数、やりすぎない為の注意点
ストレッチ
腸脛靱帯炎はオーバーユース(使い過ぎ)が原因となることがあるため、安静を保ちながら以下のストレッチを行いましょう。
- 伸ばしたい脚を反対の脚の交差する
- 手でサポートしながら腰(お尻)を下に下げていく
- 気持ちよさをお尻の外側に感じながら行う
腸脛靱帯炎は膝の外側を通っている靭帯の炎症ですが、実際にはお尻についている大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)の硬さがとても強く関わっているため、靭帯を伸ばすよりもお尻の筋肉のストレッチを行うと症状は楽になります。
※青丸が大腿筋膜張筋
ストレッチの方法について詳しくはこちらをご覧ください。
→間違ったストレッチをしないために、知っておくべきこととは?
手術
腸膝靱帯炎で手術が行われることはレアケースと言われています。
その理由には
- ランニングや練習量の軽減
- 競技後のアイシングや湿布の使用
- 消炎鎮痛剤の内服
- 局所の注射
- ストレッチ
- インソールの使用
などを行うことで、症状が改善するケースがほとんどだからです。
上記の対策や治療を行っても改善がない場合は、手術の対象となります。
それ以外の治療法
腸脛靱帯炎は異常に血管が増えることで痛みが生じることもあり、そのような場合には血管に作用する運動器カテーテル治療が行われることもあります。
痛みの原因である【異常に増えた血管をカテーテル治療により減らす】のです。
この治療によって、競技に復帰できる期間が短くなりますので、数ヶ月も変化のない場合には整形外科で一度、血管の状態を診てもらいましょう。
腸脛靱帯炎のなりやすい人
腸脛靱帯炎になりやすい人の特徴には
- 運動量過多
- 休養不足
- 脚の外側の筋肉が硬い(急な運動)
- 脚のつき方
- 内反膝(O脚)
- 筋力不足
が挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
運動量過多
運動量過多の人は膝にかかる負荷が強くなるため、膝の外側に炎症が起こりやすく、さらにその炎症が積み重なって腸脛靱帯炎の痛みが長期化することがあります。
その人の筋肉量に対して、運動が多すぎることで組織に負担がかかり痛みとなって現れるのです。
走ることが習慣の方は、予定よりも走らないと身体がいつもとは違ったり(中には「身体が気持ち悪い」と表現する人も)、走る喜びを感じるため、いつもより長い距離を走りがちのようです。
走る間隔が長く空いた場合でも、距離とペースはいつも通りで走るようにしましょう。
休養不足
長時間ハードに運動をしたら休息を設けないと、膝が常に酷使された状態になるため、腸脛靱帯炎になりやすい傾向です。
運動後の休養は筋肉を強くします。
運動量が多く、休養が足りないと筋肉が再生する前に再び筋肉を壊してしまい、次第に炎症により痛みが出てくるでしょう。
運動と休養のバランスは体を強くするだけでなく、質の良い練習にもつながります。
特にハードな練習や長距離を走った後には必ず休養を取ることを強くお勧めします。
脚の外側の筋肉が硬い(急な運動)
脚の外側の筋肉が硬かったり、急な運動を始めた場合は腸脛靱帯が伸ばされた状態のために硬く、膝の外側への負担が大きくなります。
腸脛靱帯の柔軟性不足と一般的には言われていますが、実際にはお尻にある筋肉、大腿筋膜張筋という筋肉が硬いために腸脛靱帯が引き伸ばされているのです。
その状態で急な運動をすると、膝の曲げ伸ばしで摩擦による抵抗が強まり腸脛靱帯炎が生じやすくなります。
脚のつき方
ランニングをはじめとする競技での正しいフォームは
- かかと着地
- 小指球
- 母指球
- 人差し指
と着地するのが理想的と言われています。
一瞬でこのような体重移動が行われているのです。
脚の付き方が間違っていると体全体のバランスが崩れ、全体重が膝の外側にかかって強い負荷を与えてしまうため、腸脛靱帯炎が生じやすいと考えられています。
内反膝(O脚)
O脚は太ももからすねにかけてが内側に曲がっているため、膝の外側にある腸脛靱帯が太腿骨外側の出っ張りにこすれやすくなり、腸脛靱帯炎が起りやすいと言われています。
写真のようにO脚の場合、膝の外側に荷重がかかるため、腸脛靱帯炎になりやすいのです。
O脚を真っ直ぐにするのはかなり困難なため、練習量やフォーム、セルフケアをしながら運動を継続しましょう。
筋肉へのセルフケアの方法はこちらをご覧ください。
→筋肉を柔らかくするセルフ施術をご紹介!筋肉にオススメのプロテイン3選
筋力不足
筋力不足の人はランニングなどの競技の正しいフォームで走れないこともあり、身体のバランスが崩れて太腿骨の出っ張りと腸脛靱帯が何度も摩擦を起こし、腸脛靱帯炎になることがあります。
筋トレで刺激を入れつつ、フォームの改善に取り組むと症状は軽減・消失するでしょう。
筋トレでなった筋肉痛を軽減する方法はこちら。
腸脛靱帯炎に関する疑問アレコレ
腸脛靱帯炎に関する疑問アレコレについてお答えしていきます。
腸脛靱帯炎が重症になるとどうなるの?
腸脛靱帯炎が重症になると、
- 競技をしている最中ずっと強い痛みが続く
- 日常生活にも支障をきたすほどの痛み
- 腱や靱帯の部分的な断裂
などのリスクが高まります。
大会前などになると練習も休めず、追い込むこともあるため症状が強くなることも珍しくありません。
そのような時ほどセルフケアや上手な休養、そして食事に気をつけていきましょう。
食事で摂るのが難しい場合にはプロテインで積極的に摂取するのも方法です。
→タンパク質の6つの効果と植物性プロテインをオススメする理由
腸脛靱帯炎に良い筋トレは?(私が書きます)
腸脛靱帯炎に良い筋トレとは、「鍛えるという意味ではなく、お尻の筋肉へ刺激を入れる」くらいに認識で行います。
お尻にある大腿筋膜張筋に柔軟性があると、腸脛靱帯が引っ張られることがないので、痛みの軽減・予防につながるのです。
運動前の準備運動に取り入れて行ってみてください。
- 横向きになる
- 脚を上げる
- 左右20回ほどの刺激を入れる
1の時、少しだけつま先を上に向けて、そして使っている部分の筋肉の伸び縮みを意識するとより効果的です。
腸脛靱帯炎が治らない理由
腸脛靱帯炎は安静やストレッチ、アイシングや消炎鎮痛剤の服用による保存療法が原則ですが、患部の状態に合わせた治療・施術を行わない限り症状が消失しないケースもあります。
長期間、腸脛靱帯炎が治らない場合には、先生とともに症状に向き合って、治療法も相談しながら進めていきましょう。
腸脛靱帯炎にオススメのテーピングの巻き方
腸脛靱帯炎に対するテーピングは、腸脛靱帯炎に沿って貼るだけでも楽になります。
使うテーピングは太ももですのでサイズが75ミリが好ましいです。
- 股関節の骨から膝の外側にかけて貼る
ただこれだけです。
痛みが強い場合には、痛みの感じるところだけ少し引っ張って貼ると良いでしょう。
テーピングの効果や貼り方について詳しくはこちらをご覧ください。
→テーピングの効果って?効果を最大限活かすための注意点と疑問アレコレ
【まとめ】腸脛靱帯炎について
本記事では腸脛靱帯炎の原因や症状、なりやすい人の特徴などについてお伝えしてきました。
腸脛靱帯炎は適切な治療・施術、対処により改善するスポーツ障害です。
腸脛靱帯炎になりやすい人の特徴を理解し、適切な対処で早期に痛みを軽減していただければと思います。