肩鎖関節脱臼とは?原因や分類、リハビリや治療法など詳しく解説。
カテゴリー:肩・肘・手首の痛み
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肩鎖(けんさ)関節脱臼は、肩の先にある鎖骨の先端がもとの位置から外れた状態で、肩鎖関節とは緑丸の関節で、鎖骨と肩甲骨で構成される関節です。
この記事では肩鎖関節脱臼を原因や分類、症状やリハビリ内容などを詳しくお伝えしていきます。
脱臼全般についてはこちらをご覧ください。
→脱臼とは?状態や原因、起きやすい部位や治療法について解説します
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Contents
肩鎖関節脱臼とは
肩鎖関節脱臼について、
- 原因
- 分類
- 症状
をそれぞれ見ていきましょう。
原因
肩鎖関節脱臼は、
- コンタクトスポーツ
- 事故や転倒
などが主な原因で起こり、これらの衝撃が肩への過度な圧力となって、肩鎖関節を固定する靭帯が断裂して脱臼が生じます。
肩関節脱臼と同じように手をついても生じますが、転倒や転落時に直接、肩に衝撃を受けた際に発生するケースがほとんどです。
肩関節脱臼についてはこちらをご覧ください。
→肩関節脱臼について。状態や原因、整復方法や治療法を解説します
特徴としても、女性よりも男性に多く発生し、しかも15〜30歳に多く起きています。
分類
肩鎖関節脱臼には、損傷の程度によって分類が分かれます。
- Ⅰ型(捻挫):関節包や肩鎖靱帯のみの部分的な断裂で、関節の安定性が保たれているもの
- Ⅱ型(亜脱臼):間接包や肩鎖靱帯は完全断裂して関節は不安定。鎖骨の先端がレントゲンでズレているのが確認でき、目視でも上に浮いているのがわかる
- Ⅲ型(脱臼):関節包や肩鎖靱帯、烏口(うこう)鎖骨靱帯が完全に断裂し、鎖骨の先端が明らかに上に浮いている
- Ⅳ型(後方脱臼):肩鎖関節や烏口鎖骨靱帯が断裂し、鎖骨の先端が後方に脱臼している
- Ⅴ型(高度脱臼):肩鎖靱帯や烏口鎖骨骨靱帯が断裂し、Ⅲ型の程度がさらに強いもの
- Ⅵ型(下方脱臼):鎖骨の先端が下に脱臼したもので、非常に稀にしか起こらない
分類一つとってもこのようにさまざまなタイプがあり、Ⅲ型までの分類でほとんどが発生しています。
症状
肩鎖関節脱臼は、関節包や肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯が損傷し、鎖骨と肩甲骨の安定性が低下した状態です。
そのため肩鎖関節脱臼を生じると、
- 鎖骨の先端(肩鎖関節部)周辺の痛み
- ピアノキーサイン
- 肩を上げられない
- 肩を90度以上挙げようとすると強い痛みが出る
などの症状が出てきます。
ピアノキーサインとは【鎖骨の先端を押すと下に下がるものの、その指を離すとすぐにまた上に上がってしまう症状のこと(反跳症状)】を言い、肩鎖関節脱臼を見極めるための最も指標となる症状です。
肩鎖関節脱臼はI度より症状が強くなると、見た目にもわかりやすいため、治療・施術に向けての行動を起こす方が多い傾向にあります。
関連記事として、捻挫についてはこちらをご覧ください。
→捻挫と骨折の見分け方は?それぞれの対処法と疑問にお答えします
肩鎖関節脱臼の後遺症
肩鎖関節脱臼の後遺症にはどのようなものがあるのでしょう。
Ⅰ型の捻挫の場合は後遺症の心配がない程度ですが、ⅡやⅢ型以上に関しては次のような後遺症が出ることがあります。
それぞれ見ていきましょう。
変形
肩鎖関節脱臼によく見られる後遺症としては変形があり、
- 左右の鎖骨の高さが均等ではない
- 指で触れると明らかに鎖骨が出っぱっている
が最も起きやすく、目視でも後遺症を確認できるケースがあります。
動きの制限や痛み
肩鎖関節脱臼は、肩鎖関節部の靱帯や組織の損傷によって、肩関節や腕の動きが制限され、痛みが長期的に続くなどの後遺症が残ることも。
力仕事の方は肩に負担をかけると痛みが出る、または出やすいなどの後遺症が残りやすいため、適切な治療・施術が必要です。
ピアノキーサインの残存
肩鎖関節脱臼のピアノキーサインが残存すると、浮いた鎖骨を押すと下がるが、指を離すとすぐに戻る状態が残存してしまいます。
なぜピアノキーサインが残存してしまうのかというと、鎖骨を固定していた靭帯が断裂してしまったために固定する靭帯がないことで鎖骨が浮いてしまうのです。
鎖骨が浮くことで肩鎖関節の安定性が損なわれていると判断できるでしょう。
鎖骨は骨折も起きやすく、その後遺症についてはこちらをご覧ください。
→鎖骨骨折の後遺症とは?治療法や全治期間、よくある疑問にお答えします
肩鎖関節脱臼の治療法
肩鎖関節脱臼の治療法には分類に応じて、保存療法または手術による治療が選択されます。
ここでは肩鎖関節脱臼の保存療法と、手術が選択されるそれぞれのケースを見ていきましょう。
保存療法が選択されるケース
肩鎖関節脱臼のⅠとⅡ型の場合は、手術をせずに保存療法が行われることが一般的です。
肩鎖関節脱臼の保存療法には、
- 肩甲骨から腕の重さを支える、三角巾などでの固定
- 鎖骨を上から押さえ込んで固定するテーピングや固定具の使用
などがあり、専用に開発された装具を使用するケースもあります。
固定期間をしっかりすることで、後遺症も残りにくいでしょう。
手術が選択されるケース
肩鎖関節脱臼は、Ⅲ度以上が重症とされているため、手術が検討されます。
肩鎖関節脱臼のⅢ度以上の手術による治療は、
- 関節鏡を使った靱帯の修復
- 別の部位から靱帯を移植する
- ワイヤーを肩鎖関節に通して金属で固定する
などが行われ、鎖骨を固定する靭帯がないとピアノキーサインが残存するため、手術では靭帯の修復が必ず行われるのです。
肩鎖関節脱臼のリハビリ
肩鎖関節脱臼のリハビリでは、患部の安静を保ちながらも肩まわりを鍛えるリハビリが必要です。
ここでは肩鎖関節脱臼の主なリハビリの内容をお伝えしていきます。
日常動作の回復
肩鎖関節脱臼のリハビリでは腕の曲げ伸ばしや上げ下ろしなどの日常的な動作を回復するために、固定が外れたら日常生活に必要な動作を積極的に行いましょう。
固定が外れてからすぐの時点では、肩鎖関節周辺に痛みがあるかもしれませんが、それは固定していたための痛みですので、無理なく動かすことで徐々になくなっていきます。
2週間経っても痛みに変化がない場合には、先生に相談しましょう。
筋トレ
肩鎖関節脱臼に必要な筋トレには、肩全体の支持に働く三角筋や腱板を構成するインナーマッスルを鍛える必要があります。
自重でも行うこともでき、インナーマッスルの強化にはチューブを用いると行いやすいでしょう。
肩を構成する筋肉をリハビリで鍛えていくと、
- 肩の安定性の強化
- 脱臼の恐怖心克服
などのメリットがあります。
インナーマッスルの鍛え方についてはこちらをご覧ください。
→ルーズショルダーって何?原因と症状、筋トレやテーピングを詳しく解説!
ストレッチ
肩鎖関節脱臼のストレッチには一般的に行われる肩周辺のメニューを行いましょう。
初めのうちは多少の痛みがありながらも行っても構いません。
ストレッチの際に関節に感じる痛みは、関節が柔らかくなると次第に痛みもなくなっていくものですが、数週間も同じ痛みが続くようなら先生に相談して行いましょう。
そのまま自己判断で行うと「実は捻挫していた」ということも起きかねません。
ストレッチについてはこちらもご覧ください。
→間違ったストレッチをしないために、知っておくべきこととは?
肩鎖関節脱臼に関する疑問
続いては肩鎖関節脱臼に関する疑問にお答えしていきます。
悩みや不安解決のきっかけにしていただければ幸いです。
放置するとどうなるの?
肩鎖関節脱臼を放置してしまうと、
- ピアノキーサインの残存(鎖骨が浮いたままになる)
- 脱臼から数時間以上経つと、麻酔をかけての整復が必要になる
- 痛みや不快感、美的ストレスが長期的に続く
など、患部ばかりではなく気持ち的な面でも良くない影響が出るでしょう。
出っ張りは戻るの?
肩鎖関節脱臼による出っ張りは、症状に応じた保存療法や手術を受け、適切な安静期間を過ごし、正しくリハビリを行うことで戻る場合が多いです。
しかし、固定を怠ると組織修復の時期の逃し、鎖骨が浮いた状態が戻らないことも少なくありません。
しっかりとした固定と固定期間を設け、最後までリハビリを行うと出っ張りも限りなく元に戻るでしょう。
「押すと痛い」のは治るの?
肩鎖関節脱臼の「押すと痛い」症状は2~3週間程度続き、のちに緩和していく傾向です。
ですが放置したことによる症状では、組織の炎症が長期的に続いたり、肩鎖関節の組織修復が遅れると「押すと痛い」症状は長く残る可能性も。
ですが、押さなければ痛くないのであれば、押す必要もありません。
大切なのは「動いて痛いか、痛くないのか」です。
押さなければ痛みがなければ、特に心配はありません。
サポーターはあるの?
肩鎖関節脱臼専用のサポーターは、接・整骨院、整形外科をはじめ、インターネットの通販サイトでも手軽に購入することができます。
ですが、サポーターだけあっても
- いつまで固定すべきか
- いつからリハビリは開始して良いのか
- 今感じている痛みはどうすればなくなるのか
など、自己判断では難しいことばかりですので、先生に見てもらいながらサポーターを装着すると良いでしょう。
サポーターについてはこちらをご覧ください。
腕立て伏せはしていいの?
肩鎖関節脱臼のリハビリには、腕立て伏せのトレーニングメニューがありますが、逆に腕立て伏せによって脱臼が再発してしまうケースもあります。
肩周りの筋力強化と並行して、まずは壁立て伏せから行い、患部の痛みの有無を確認しながら行いましょう。
【痛みがある=やってはダメ】でもないこともお見知り置きください。
痛みがあっても、継続していくと消えていく痛みもあるため、先生と連携しながら行うのが理想的なのです。
ご相談はLINEからどうぞ☆
テーピング方法を教えて!
ご紹介するテーピングの貼り方は難しいものではありませんが、一人で貼るのはとても難しいので誰かに貼ってもらった方が良いでしょう。
1:患部の肘を90度に曲げたまま、上半身を前に倒す
2:上半身を起こすと同時に肩鎖関節を通るように背中側からテーピングを貼る
テープの始まりと終わりに部分は引っ張らずに、皮膚に乗せるように貼りましょう。
こちらのテーピングは伸びるタイプで、しかも撥水ですのでシャワー程度なら貼ったままでも構いません。
角を丸く切ってはると剥がれにくく、皮膚も傷めにくくなります。
不安定さを感じる際には斜めに1本づつ追加して、合計3本で補強すると良いでしょう。
あくまでもセルフで貼る方法ですので、強度もそこまで強くありません。
スポーツをする際には先生にしっかりと巻いてもらいましょう。
テーピングの効果や注意点についてはこちら。
→テーピングの効果って?効果を最大限活かすための注意点と疑問アレコレ
【まとめ】肩鎖関節脱臼について
本記事では肩鎖関節脱臼の原因や分類、症状や治療法などについて解説してきました。
この時期は季節柄、特に道が悪く足を滑りやすいため、転倒に十分注意して過ごしましょう。
肩鎖関節脱臼の原因や症状を理解し、万が一なってしまった場合は早めに適切な治療を受けてくださいね。