野球肩の原因と対処法、ケアやストレッチ方法を徹底解説!
カテゴリー:肩・肘・手首の痛み
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野球やラケット競技では肩の痛みが起きやすくなります。
その中の一つにある「野球肩」はとても多くの選手を悩ませるスポーツ障害です。
「野球肩の原因と対処法、ケアや筋トレ方法を徹底解説!
Contents
野球肩とは
野球の投球動作の他、テニス・バレーボールのサーブ・スマッシュ等、腕を大きく振る動作を繰り返すスポーツで生じる肩の痛みです。関節包や肩関節に付着する腱や筋あるいは骨の損傷によるもの
野球肩という名前の障害名は正式には存在しません。
投球動作に近い動きを行うスポーツでも野球肩と同じ症状が発症します。
例えば、
- 槍投げ
- バレーボールのアタック
- ハンドボール
- 水球
- テニスのサーブやスマッシュ
などです。
骨格が成長している時期の中高生が発症しやすく、投球動作を安定させる筋力も身に付いていないことが原因の一つとして考えられます。
野球肩の原因とその症状
野球肩の原因として考えられるのは筋力不足のほかに、下記の要因があります。
- 柔軟性不足
- 間違った動作フォーム
- 過度な投球動作
上記の原因が密接に関わり合って症状が出ているので、自分だけの感覚だけでは原因の特定、評価は難しいでしょう。
筋力不足をはじめ、考えられる4つの原因により発症する野球肩の種類には、
- インピンジメント症候群
- 腱板損傷
- リトルリーグショルダー
- ルーズショルダー
- 肩甲上(けんこうじょう)神経損傷
のように5種類あります。
それぞれ見ていきましょう。
インピンジメント症候群
野球肩で最も多いのはインピンジメント症候群で、【肩を上げる際、特に投球動作時に肩峰(けんぽう)と上腕骨頭(じょうわんこっとう)がぶつかって間にある腱板が挟まれて炎症を起こす障害】です。
野球の投球動作のほかに、テニスやバドミントンなどの腕を振り上げる動作を繰り返すスポーツに多くみられます。
特徴的な症状は
- 肩を上げる時の痛みやひっかり感
を感じます。
肩を上げる角度は70〜120度の範囲(写真参照)が目安です。
インピンジメント症候群についてはこちらをご覧ください。
→インピンジメント症候群の原因と診断や治療法、対処法も詳しく解説!
腱板損傷
腱板損傷とは【肩に付いている4つの筋肉がまとまった腱を腱板と呼び、その腱板が動作により損傷する障害】をいいます。
野球動作だけでなく、ラケット競技や転倒などでも起きやすい障害です。
症状には
- 肩の上げ下ろしの際の痛みや引っかかり、時にはゴリゴリと音がすることも
- 自力で肩を上げると痛いが、人に上げてもらうと痛くない
- 寝ていて痛みで目が覚める
など日常生活にも支障をきたすほどの症状が出てきますし、かなりの精神的苦痛も伴います
リトルリーグショルダー
リトルリーグショルダーとは【成長期に多く、投球による負荷で上腕骨の骨端線(こったんせん)と言われる箇所が離れてしまい痛みを発症する障害】です。
放っておくと成長障害にも繋がり、痛みが出た先もスポーツを続けるのでしたら焦らずにしっかりと治しておくべきでしょう。
症状には、
- 投球時、投球後の痛み
- 肩を捻ると痛い
となります。
ルーズショルダー
ルーズショルダーとは【肩関節が通常よりも緩いことで何かしらの症状を感じる障害】です。
関節が緩いために
- 肩が抜ける感覚
- 肩の不安定感や脱力感
という症状を感じます。
筋力不足による肩関節の緩さもありますが、先天的な要素も大きく関わっている障害となっています。
腕をだらんと垂らして、腕を下に少し引っ張ると赤丸の箇所に抜けるような感覚を感じたらルーズショルダーの可能性が高いでしょう。
野球の他に
- バレーボールのスパイクやサーブ
- テニスのサーブやスマッシュ
- 槍投げ
でも生じやすい障害です。
ルーズショルダーについてはこちらをご覧ください。
→ルーズショルダーって何?原因と症状、筋トレやテーピングを詳しく解説!
肩甲上神経障害
肩甲上神経障害は【投球動作などで筋肉内を通っている神経が引っ張られたり、圧迫を受けて損傷してしまう障害】をいいます。
症状には
- 肩甲骨周辺の痛み
- 神経圧迫による筋力の低下
が挙げられます。
テニスやバレーボールの動作でも起こりやすい障害です。
一口に「野球肩」といっても様々な原因と症状があることがお分かりいただけたかと思います。
野球肩になってしまった時のマッサージのやり方
野球肩になってしまった時のマッサージのやり方を3種類ご紹介します。
マッサージ、というよりもセルフで筋肉を緩める方法です。
野球肩に関係している筋肉へは
- 僧帽筋(そうぼうきん)
- 棘下筋(きょくかきん)
- 大胸筋(だいきょうきん)
上記の筋肉へのアプローチになります。
まずは僧帽筋からになります。
- 緑丸で囲った、押して痛いところや硬いところを探す
- 押したまま肩をすくめる
- 肩をすくめる、脱力を繰り返す(決まった回数はなし)
肩をすくめる動作を繰り返していくと、押しているところの筋肉が緩み、痛さや硬さが弱くなっていきます。
押しているところが緩んだら押す場所をずらして行いましょう。
行っているうちに肩が軽くなっていくのがわかるかと思います。
次は棘下筋のセルフ施術です。
少し押しづらい場所ですので、誰かに押してもらっても良いですね。
- 緑丸で示した範囲を指で押す
- 痛いところ、硬いところを見つける
- 肘を伸ばして前ならえをして肘を引く
- 3を繰り返す
強く押すとかなり痛いところですので、加減して最初の方は行ましょう。
行っているうちに肩周りが軽くなっていきます。
では最後、大胸筋の緩め方です。
- 緑丸の範囲を押して痛いところ、硬いところを探す
- 肘を曲げて肩を水平にする
- 大胸筋を押したまま腕を閉じて、開くを繰り返す
行っているうちに押しているところが緩んでいくのが感じ、肩全体の筋肉が緩んで、肩も軽くなり、動作も楽にできるでしょう。
野球肩で投げる瞬間に痛い原因とは
投げる動作で痛みを感じる原因には、先ほど挙げたそれぞれの原因が挙げられますが、原因を特定するには自己判断では難しいでしょう。
きちんと検査を受け、最も考えられる原因にアプローチをして、丁寧に一つずつ解決していく必要があります。
野球肩になる時期は成長期が多いため、この時期に治しておかないと「大人になってもボールを投げる時に痛む」ということにもなりかねません。
焦らず、慎重に治していきましょう。
野球肩が治らない原因
野球肩が治らない原因は、痛みを感じなくなると完治したと思い込み、すぐに投球動作を再開してしまうからです。
ここで最も注意しなければいけないのは《痛くない=治った》ではありません。
そもそもの動作フォームに問題があるにも関わらず、痛みが引いたからと言って動作してしまえば再発するのも当然です。
野球肩になってしまった時には、原因の特定とそれに対する丁寧なアプローチが必要です。
「休んでいれば治るだろう」や「痛みが落ち着けばまた投げられるだろう」と思わない方が最短で症状の改善につながるでしょう。
野球肩のチェック方法
野球肩のチェック方法は下記の通りです。
少しでも痛みや違和感を感じたら放置せずに、治療・施術を受けるようにしてください。
- 肩関節が左右同じように挙げられるか
- 前ならえの姿勢で肩関節が左右同じように内側に捻れるか
簡単にチェックできるのはこの2つの方法です。
投球動作を行う側で自然な動きができない場合や、右(下)の動作ができない、痛い、または違和感がある場合は野球肩の疑いがあります。
野球肩にオススメのストレッチ
野球肩の予防や改善におすすめのストレッチは、下記の筋肉を伸ばすストレッチです。
- 僧帽筋
- 棘下筋
- 大胸筋
この部位を重点的にストレッチして、柔軟に筋肉が動くようにケアを行いましょう。
僧帽筋からご紹介します。
- 両手をバンザイする(肩が痛い時には無理しないこと)
- 肩甲骨を上げて両腕を上にあげる
- そのまま15〜25秒キープ
- 秒数が経過したら腕を下ろす
肘の曲げ伸ばしで誤魔化してしまいがちですので、肩甲骨をあげる意識を持って行ってください。
数十秒上げたままから腕を下ろすと肩周辺に何かが流れる感覚があるでしょう。
それは血液です。
締まっていた状態から一気に血液が開放されて流れが良くなるのです。
硬くなった筋肉は血管を圧迫してしまい、血流の流れはよくありません。
血流が多く流れると筋肉の損傷が修復され、柔らかい状態も維持されて、動きも滑らかになります。
ストレッチではそのような効果も狙って行うと良いでしょう。
次は棘下筋です。
- 手の甲を腰に当てる
- 片方の手で肘を内側に入れる
- 気持ち良さを感じる間行う
前から見るとこのようになります。
横から見るとこのようになります。
ストレッチのについてはこちらをご覧ください。
→間違ったストレッチをしないために、知っておくべきこととは?
大胸筋のストレッチも難しくありませんので、空き時間に行ってみましょう。
- 指先が外を向くように壁に掌を当てる
- 胸を開く
- 気持ち良さを感じる間行う
これだけです。
手の位置を水平か、または上や下にすると伸びる箇所も変わりますので伸ばされている感覚を見つけながら手の高さを消えると良いでしょう。
競技前に筋肉を緩めすぎると動きが鈍くなりますので、クールダウンやお風呂上がりなどに行ってください。
野球肩が治る期間の目安
野球肩が治る期間の目安としては、症状にもよりますが数週間〜3ヶ月ほどです。
手術が必要な場合は3ヶ月以上かかることも。
投球動作が行えるようになってからもリハビリや経過観察が必要ですので、以前と同じような状態までの回復となると実際には更に長期間かかる可能性もあるでしょう。
丁寧に、一つづつ段階を踏んで進めていってください。
野球肩に湿布は有効?
軽い炎症には湿布やアイシングは効果的です。
まずは炎症を抑えることが大切なので、アイシングは必須です。
アイシングに必要なものがなければ湿布での代用でも構いませんが、できれば氷を使ってのアイシングの方が効果はさらに良いでしょう。
アイシングについてはこちらをご覧ください。
→アイシングを効果的にする方法、時間と回数、やりすぎない為の注意点
ですが、これまでお伝えした通り、フォームや筋力、柔軟性を見直さないと根本的な解決にはならないので、あくまでも一時的な処置と認識してください。
野球肩の治療法
野球肩の治療法は、安静から始まり、高周波温熱治療や超音波治療、ヒアルロン酸の注射などになります。
症状にもよりますが、肩関節内の組織が損傷してしまっている場合は手術を行うこともあり、手術となると長期の治療期間が必要となるでしょう。
ノースローでも野球肩が治らないワケとは?
野球肩がノースローを続けても完治しない理由は、フォームなどの根本的な原因の解決にはなっていないからです。
たしかに炎症を抑えて痛みをなくすには、絶対安静でノースローでいることが大切です。
しかし、復帰して以前と同じフォームもしくは痛くなることを恐れて以前よりも悪いフォームで投球動作をしてしまうと、再発する可能性が高まります。
野球肩になった時にはノースローを基本としながらも、投球フォームの修正に重きを置くことが最も大切です。
野球肩のリハビリと筋トレ方法
野球肩のリハビリは症状に合わせて、不足している筋力を高めたり、柔軟性が不足している部位のストレッチを行います。
安静にして軽くシャドウピッチングを行えるようになってからは、原因として考えられる投球フォームの修正を行いましょう。
筋力トレーニングを行う際には、ダンベルやバーベルで行う強い負荷の荷重ではなく、柔軟性も取り入れたチューブやタオル、自重を利用したトレーニングの方が効果的で怪我のリスクも少なくなります。
野球肩を予防するには
野球肩を予防するには
- 身体にあったフォームを身につける
- 投球過多にならない
- ケアを怠らない
この3点です。
成長期の段階は野球肩になりやすいので、インナーマッスルや全身の柔軟性を強化して、関節の安定性を高めるトレーニングは練習メニューが必要でしょう。
一番は選手目線になれる指導者の対応が大切かもしれません…