肘頭骨折とは?概要や原因、治療法やリハビリ内容などの疑問にお答えします
カテゴリー:肩・肘・手首の痛み
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肘の先のことを解剖学的には「肘頭(ちゅうとう)」といい、肘頭は皮膚が薄く、骨を衝撃から守るための筋肉に覆われていないため、比較的生じやすい部位の一つです。
ここでは肘頭骨折の概要や原因、治療法やリハビリ内容までをわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
Contents
肘頭骨折とは
「肘頭骨折とは」についてみていきます。
肘の先である肘頭は、肘鉄とも言われる部位です。
肘の機能は二の腕と前腕(ぜんわん:肘から手首まで)をつなぐ関節のため骨折をしてしまうとスポーツはもちろん、日常生活にも大きな支障が生じてしまいます。
ではそれぞれ肘頭骨折の概要や原因、症状について詳しく見ていきましょう。
概要
肘頭骨折は青丸の部分が何らかの原因によって骨折してしまったものを言います。
※右肘です。
原因
肘頭骨折の主な原因には、
- 転倒や事故により直接的に肘の先をぶつけてしまった時
- 事故やスポーツの場面で大きな衝撃を手で受けた
際に起きます。
直接的に肘に衝撃が加わった場合には、肘を守る筋肉がないため骨折を生じやすい部位です。
肘に直接の衝撃はないけども、転倒やスポーツの際に手をつき、肘に付く上腕三頭筋という腱が肘頭を引っ張って起きる剥離骨折が起きる部位でもあります。
画像の緑丸が上腕三頭筋の腱です。
三つの筋肉が合わさり、くっ付く腱ですのでとても強いのです。
スポーツでは
- 器械体操
- レスリングや柔道
などの動作で起きると言われていますが、私は今だに見たことがありません。
ほとんどの場合において、直接的な衝撃により生じる骨折と言ってよいでしょう。
剥離骨折の関連記事はこちら。
→足首の剥離骨折で行うリハビリとは?早く治す方法と疑問にお答えします
→骨盤の剥離骨折について。原因や症状、早く治す方法を解説します
症状
肘頭骨折を生じると、
- 押すと痛い
- じっとしていてもズキズキする痛み
- 腫れ・内出血・熱感
- 自分で肘を伸ばすことができなくなる(伸ばされても、もちろん痛い)
- 患部の凹み
などの症状が出ます。
痛みが強いため、そのまま放置することはほとんどないでしょう。
同じ骨折関連で、放置するとどうなるのかが気になる方はこちらをご覧ください。
肘頭骨折の治療法
肘頭骨折の治療法には、ワイヤー固定による手術と、保存療法があります。
それぞれについて見ていきましょう。
手術(ワイヤー固定)
肘頭骨折の手術は、折れた骨のかけらが激しく引き裂かれている場合に選択されます。
肘頭骨折の手術による治療は、
- 細い針金のワイヤーを巻いて固定する
- 骨折した骨のかけらがバラバラにたくさんある場合は金属のプレートを用いて固定する
などの方法になります。
このふたつの固定を並行すると、
- 上腕三頭筋の腱による牽引で骨折面が離れることを防止する
ことができ、骨折面が離れないため早期の治癒が望めるしょう。
保存療法
肘頭骨折の保存療法は、折れてしまった骨のかけらが、著しく引き裂かれなかった場合に選択されることが一般です。
肘頭骨折の保存療法は、
- 患部を冷やす
- 消炎鎮痛剤などの服用
- 二の腕から前腕までギプスを巻く
- 肘を少し伸ばした状態で約1ヶ月程度固定する
などの治療法となり、固定が外れると肘の曲げ伸ばしや筋力を回復するのリハビリの開始となります。
上記の他に、骨折を早く治す方法はこちらをご覧ください。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
肘頭骨折のリハビリのやり方(進め方)
肘頭骨折のリハビリのやり方(進め方)について見ていきましょう。
ここでは自分でできる方法と病院で行うリハビリ方法を解説していきます。
※自分で行うリハビリは、実施しても問題がないかどうかを先生に確認してから行うようにしましょう。
自分で
肘頭骨折のリハビリの主な目的は
- 肘の動きの回復
- 筋力の回復
が主になります。
スポーツ選手でなければ筋力トレーニングは必要ないと考えて良いでしょう。
なぜなら日常的に使えるようになれば、自然と筋力も回復するためです。
ですのでこの項では、肘の動きの回復を目的とするリハビリをご紹介します。
固定が外れてすぐの状態では
- 肘周辺の硬さ
- 動きにくさ、または動かしにくさ
- 力が入らない
などの症状があります。
そのため自分の力が動かすことはとても辛く、難しいので初めのうちはもう一方の手で肘を曲げ伸ばししてあげましょう。
動かしていくうちに肘を動かす感覚も戻ってきますので、徐々に骨折した方の肘だけで動かしていきます。
肘の硬さについても自力で硬いものを柔らかくするのはとても難しいため、もう一方の手で曲げ伸ばしをしてあげたほうがスムーズに動きの範囲も広がっていくでしょう。
当院でも患者さんにそのように伝えています。
リハビリは焦らず、毎日地道に行うことが最も近道ですので、焦りの気持ちは抑えて頑張りましょう。
病院で
病院で行われるリハビリには、
- 肘の曲げ伸ばし、動きをスムーズにする「運動療法」
- 三角巾や装具を使用した「荷重練習」
などがあります。
肘頭骨折後の骨折部の腫れが残ったままだと、肘の機能に後遺症が残るリスクもあるため、病院でのリハビリは比較的早い段階で行われる傾向にあります。
必要な期間
肘頭骨折のリハビリは、骨折部の安定が見られやすい3週~1ヶ月程度で始め、12週程度の期間が必要でしょう。
骨折部が早くくっ付けばその分リハビリも早く始められますので、こちらの記事を参考にして骨折部の修復を早めていただければと思います。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
肘頭骨折の後遺症
肘頭骨折の後遺症には、
- 関節が硬くなりスムーズな動きができなくなる「拘縮(こうしゅく)」
- 軟骨のすり減りによる肘の痛み、動きが悪くなる「変形性関節症」
- 小指のしびれや曲げ伸ばしが難しくなる「尺骨(しゃっこつ)神経麻痺」
などが起こるケースもあります。
肘頭骨折の後遺症を予防するためにも、固定期間は先生の指導を守り、リハビリは自己判断せずに最後まで行うようにしましょう。
肘頭骨折の疑問アレコレ
ここでは肘頭骨折の疑問アレコレにお答えしてみたいと思います。
全治どのくらい?
肘頭骨折は、4~6週程度の保存療法が必要になり、全治までには病態によっても異なりますが、2~3ヶ月程度かかると見ておきましょう。
もちろん固定期間の過ごし方やリハビリにより目安の期間より早めることは十分可能です。
こちらをご覧ください。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
手術の入院期間は?
肘頭骨折の手術を受けた場合は、傷の状態と患部の固定具合を見るため、およそ7日前後の入院が必要となるでしょう。
【まとめ】肘頭骨折について
本記事では肘頭骨折の概要や原因、症状や治療法についてお伝えしてきました。
転倒やスポーツなどで肘頭に強い衝撃が加わった際には、
- 痛みが楽な肘の角度で
- 副木その代用となるものを用いた固定をしつつ
- 患部のアイシング
の応急処置をし、早めに先生に見てもらい適切な治療を受けるようにしましょう。