肘関節脱臼について。原因や症状、治療法と全治期間の目安を解説。
カテゴリー:肩・肘・手首の痛み
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肘関節脱臼はスポーツや転倒、事故などが原因で、関節が正常の位置より逸脱してしまった状態のことを言います。
ここでは肘関節脱臼の原因や状態、症状や治療法についてわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
脱臼について詳しくはこちらをご覧ください。
→脱臼とは?状態や原因、起きやすい部位や治療法について解説します
Contents
肘関節脱臼について
はじめに、肘関節脱臼について、原因と状態、症状や合併症をそれぞれ見ていきましょう。
原因
肘関節脱臼は、
- スポーツや転倒、事故の際に、手をついた
- 肘関節やそのまわりへの衝撃によるもの
など、外傷性のものが主な原因です。
成人の場合の肘関節脱臼は、肩関節脱臼の次に多いと言われ、
- 脱臼単独で起こるケース
- 脱臼の他に合併症が起こるケース
のそれぞれ起こるケースがあります。
肩関節脱臼についてはこちら。
→肩関節脱臼について。状態や原因、整復方法や治療法を解説します
状態と症状
腕は、
- 肘から上の上腕骨(じょうわんこつ)
- 肘から手首の間にある橈骨(とうこつ)
- 肘から手首の間にある尺骨(しゃっこつ)
という三つの骨によって構成されています。
肘関節脱臼は、通常では密着している上腕骨と橈骨・尺骨のそれぞれが、外的な力によって耐えきれずに外れてしまうのです。
また肘関節脱臼は、
- 関節を構成している骨同士の完全なズレ:【脱臼】
- 関節の遊びの範囲内にズレが留まっている【亜脱臼】
という分類にも分けられます。
肘関節脱臼の主な症状には、
- 肘関節の明らかな変形
- 肘関節の動作不能
- 肘関節の痛みや腫れ
などがあります。
肘関節脱臼を生じ、まわりの靱帯や腱などの損傷が著しい場合は、立っているのも辛いほどに激しい痛みを感じるため、自身でも比較的肘関節脱臼だと気付きやすいと言えるでしょう。
他の関節の脱臼についてはこちら。
→肩鎖関節脱臼とは?原因や分類、リハビリや治療法など詳しく解説。
合併症
肘関節脱臼の際に起こる合併症には、
- 脱臼時、または整復時に神経や血管に傷がつき、しびれや感覚のなさが現れる「神経血管損傷」
- 本来では骨が存在しない部位に骨形成が起こる「異所性骨化」
- 手首の回転動作を担う「遠位橈尺(えんいとうしゃく)関節の不安定性」
- 骨折や靱帯の損傷
などが生じるケースもあり、患部の状態をしっかりと見る必要があります。
脱臼時による血管や神経の損傷は防ぎようがありませんが、整復動作はゆっくり丁寧に行えば周りの組織を傷つけるリスクはかなり低いのでご安心ください。
脱臼と同時に骨折が生じたのは「脱臼骨折」と言い、詳しくはこちらをご覧ください。
→脱臼骨折とは?原因や症状、脱臼骨折が起こりやすい部位を解説。
肘関節脱臼の予後
肘関節脱臼の予後は、受傷直後の場合は整復は比較的容易とされるものの、時間の経過とともに整復が困難になるケースがほとんどです。
その理由には【関節を守る筋肉が防御反応により、固くなるため】です。
ですが、肘関節を構成する骨に損傷が伴っていない脱臼の場合は、比較的予後は良好だとされています。
肘関節脱臼の治療法
肘関節脱臼の治療法には、保存療法(固定)と手術、リハビリが行われます。
ここではそれぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。
保存療法(固定方法)
肘関節脱臼の保存療法(固定方法)は、徒手整復後に手首を立て(チョップする手の形)、肘関節を90度に曲げた状態で3~4週間程度のギプス固定を行います。
固定が外れた後、手首を返したり肘を曲げたときに痛みは感じますが、固定によるものと組織の修復がまだ終わっていないがための痛みです。
日常生活を過ごす上で、徐々に使っていくと次第に痛みは無くなっていくでしょう。
どの程度動かして良いかは先生と相談しながら進めてください。
ご相談はこちらよりどうぞ☆。
こちらも併せてご覧いただけると、早く痛みを軽減できるでしょう。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
手術
肘関節脱臼の手術が検討されるケースには、
- 整復が困難
- 固定をしても肘関節に安定性が見られない
- 再脱臼を起こす可能性がある場合
- 肘関節の軟部組織が広範囲にわたって損傷している場合
などが対象となり、肘関節の脱臼のみであれば手術は検討されずに、徒手整復のみとなるでしょう。
リハビリ
保存療法や手術後の固定が終わると、
- 電気や超音波などによる療法
- 関節可動域訓練
などが行われます。
肘関節脱臼のリハビリは、可動域を改善するために、固定が外れたらすぐに動かし始めることが一般的です。
「肘の曲げ伸ばしができない」などにならぬよう、積極的に、かつ諦めずに最後まで行いましょう。
肘関節脱臼と同時に骨折が生じている場合は、プレートやスクリューなどが入ったままのリハビリになります。
リハビリにはタイミングと時期が大切ですので、痛みを怖がらずに少しづつでも行ってください。
肘関節脱臼の治療期間(全治)
肘関節脱臼はの治療期間(全治)は、適切な整復後より、固定を3~4週間程度の期間を経て2~3ヶ月程度で全治できるでしょう。
肘関節脱臼で手術を受けた場合は、全治までに3~6ヶ月程度の期間が必要とお見知り置きください。
肘関節脱臼に関する疑問
続いては肘関節脱臼に関する疑問にお答えしていきます。
後遺症はあるの?
肘関節脱臼の後遺症には、
- 肘関節が不安定で異常な動きをしてしまう動揺関節
- 可動域制限
- 患部の変形
- 痛みやしびれ
などがありますが、大きな骨折を伴っていなかったり、完全な整復と組織の修復がしっかりとなされていれば、大きな後遺症を残すことはないでしょう。
整復方法は?
肘関節脱臼の整復方法は、手首と肘関節周辺を把持し、ゆっくりと肘関節を曲げていくと整復されます。
こう書くと方法は簡単です。
細かいポイントが実はいくつもありますが、ここでは省略します。
整復時の痛みは大きく出ることもなく、スムーズに戻りますのでご安心ください。
ただし、筋肉の防御反応や骨折を伴っていないケースに限ります。
整復は自分で行うとなると片手になってしまいますし、もし片手で行うとなると整復時に肘関節内の組織を痛めてしまい、後遺症のリスクを高めてしまいます。
そして誰かに行った時に、もし適切に整復がなされないと、先ほどお伝えした後遺症が起きてしまいかねません。
迷わずに救急車か病院、接骨院・整骨院の先生に整復してもらいましょう。
肘の亜脱臼は大人でもあるの?
肘の脱臼の程度が軽い状態の「亜脱臼」は、活動性の高い10~20代の若い人に多く見られる脱臼で、
- 生まれつき関節にゆるみがある人
- 急に重いものを持つ
- 手を身体の後ろに持っていく急な動作
などが原因になることがあるため、大人でも生じやすい傾向にあるようです。
ですが、現場では今までこのような患者さんに出会ったことはありません。
起きることはありますが、そう頻回になることでもありませんし、肘関節脱臼自体もそこまで多く発生するわけではないと捉えてよいでしょう。
脱臼と同時に靭帯は損傷するの?
脱臼とは関節が外れてしまうことをいいますが、その関節に緩みのないように支えているのは靭帯です。
衝撃により、靭帯が関節を支えられなくなるために脱臼が起こるため、靭帯の損傷は起きてしまいます。
脱臼と同時に生じた靭帯はそのまま固定をしていても再び治ることはなく、手術で戻すのが最も確実です。
靱帯について詳しくはこちらをご覧ください。
→靭帯損傷とは?症状や治療法、早く良くなる方法を解説します。
応急処置の方法は?
肘関節脱臼の応急処置について大切なことは、
- 患部は触らずに添え木や段ボールなどで固定したまま、先生に見てもらう
ことです。
もし、スキー場などで負傷した時などは、先生に見てもらうまで時間がある場合などはアイシングをしながら移動すると炎症を最低限に抑えることができるでしょう。
ですが、冷えて筋肉が硬くなると徒手整復が難しくなるため、麻酔が必要になることも。
移動に30分以上かかる場合にはアイシングはせずに、患部が動かないように固定しながら先生に見てもらいましょう。
アイシングの仕方はこちら。
→アイシングを効果的にする方法、時間と回数、やりすぎない為の注意点
【まとめ】肘関節脱臼について
本記事では肘関節脱臼の原因や状態、治療法についてお伝えしてきました。
肘関節脱臼はスポーツや転倒、事故などで肩関節脱臼の次に生じやすい傾向にあります。
スポーツなどでは転び方を学んだりするなどをして、手だけで全体重がかからないように転び方を身に付けましょう。
万が一のために、応急処置も同時に理解・把握し、迅速な対応をしていただければと思います。