先天性股関節脱臼とは。特徴や原因、症状や治療法についてお伝えします。
カテゴリー:脚の痛み
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先天性股関節脱臼は赤ちゃんの出生前や産後に、股関節がもともとの位置から外れている脱臼のことを言います。
ここでは未発達な赤ちゃんの股関節に生じやすい、先天性股関節脱臼の原因や症状、主な治療法について詳しく見ていきましょう。
変形性関節症で多い「変形性膝関節症」についてはも、こちらよりご覧ください。
→変形性膝関節症の原因と将来ならない為に今すぐにでもすべきコト
→変形性膝関節症のしてはいけない運動とスクワットやウォーキングの効果
Contents
先天性股関節脱臼とは
先天性股関節脱臼はどのような障害のことを言うのでしょうか?
ここでは、
- 特徴や性別、割合
- 原因
- 症状
- 診断のチェックリスト
をそれぞれに見ていきます。
「脱臼」について詳しくはこちらもご覧ください。
→脱臼とは?状態や原因、起きやすい部位や治療法について解説します
先天性股関節脱臼について(年齢や性別、割合など)
先天性股関節脱臼は、生後3~6ヶ月程度の赤ちゃんに起こりやすく、男児よりも女児の方が発症しやすい傾向にあり、女児は男児のおよそ9倍というデータも。
現代では赤ちゃんの正しい抱っこの仕方・おむつ替えの正しい体勢などが浸透してきていることで、先天性股関節脱臼の現在の発症率は1/1000程度となっています。
原因
先天性股関節脱臼の原因には、
- 股関節が外れやすい体質であるため
- 環境的な要因
などが考えられています。
変形性股関節症の家系がいる場合、先天性股関節脱臼のリスクが25%に及び、関節のゆるみや骨盤の形がもともと悪いなどの要素があると、関節を構成する組織に脱臼しやすく赤ちゃんにも遺伝する傾向にあるようです。
当院でも患者さんにヒアリングを行うと、「股関節の悪いおばあちゃんやお母さんがいる」と聞くのも珍しくありません。
先天性股関節脱臼の環境的な原因には、出生後の股関節の肢位や動きの状態が原因の一因でもあります。
間違った抱き方や寝かせている際に股関節を伸ばしているなど、赤ちゃんの股関節の動きが妨げられてしまうと、安息の肢位であるM字開脚の姿勢が取れなくなることで脱臼が生じやすくなると考えられているのです。
症状
先天性股関節脱臼の主な症状には、
- 左右の足の長さが異なっている
- 歩き方が不自然である
- 股関節が十分に開かない
- 太ももにできやすいシワの範囲や深みに差がある
などがあり、痛みは生じないものの、赤ちゃんの一人歩きができるようになった頃に歩き方の不自然さから先天性股関節脱臼に気付くケースが多い傾向にあります。
診断のチェックリスト
先天性股関節脱臼の診断や検査方法のチェックリストには、生後3~4ヶ月程度の乳児検診によって、
- 足の動き
- 両足の長さの左右差があるか
- 太もものシワ
- お尻の形
などを視診によって確認し、足と股関節を動かすクリックテストなどが行われます。
また視診やクリックテストでも、先天性股関節脱臼なのか、その他の症状なのかどうかの見極めが難しい場合は、股関節のレントゲン検査によって診断が行われて確認されるでしょう。
先天性股関節脱臼の治療法
先天性股関節脱臼の治療法は、
- 乳児期
- 1歳以後の幼児期
によってその方法が異なっています。
ここでは先天性股関節脱臼の、乳児期・1歳以後の幼児期それぞれの治療法について見ていきましょう。
先天性股関節脱臼の治療法【乳児期】
乳児期の先天性股関節脱臼の治療法は、
- 超音波診断によるコントロール
- リーメンビューゲル装具による治療
先天性股関節脱臼の一般的な治療法となるリーメンビューゲル装具は、装着してから1週間以内に整復されることが多い傾向です。
リーメンビューゲルとは赤ちゃんが本来とりやすい姿勢、股関節は広げ、膝を曲げた状態を装具によって固定するものです。
脱臼が整復されたことで今までと感覚が変わり、赤ちゃんは一時的に機嫌が悪くなったり、股関節の部分に腫れが生じるケースもあるでしょう。
リーメンビューゲル装具で整復が得られた股関節が安定した状態になるおよそ4週間は入浴を避けることが基本となり、装具期間は12週間程度です。
ただ、出生後1ヶ月までに生じた先天性関節脱臼の場合は、自然治癒するケースが多いため、基本的に治療をしないことが一般的になっています。
先天性股関節脱臼の治療【1歳以後の幼児期】
1歳以後の幼児期に先天性股関節脱臼の治療は、リーメンビューゲル装具では整復率がかなり低下してしまうと言われているため、けん引による治療が一般的になります。
股関節脱臼を見つけた時期や成長の度合いによってそれぞれ治療法も選択されるでしょう。
先天性股関節脱臼に関する疑問
続いては、先天性股関節脱臼に関する疑問にお答えしていきます。
後遺症はあるの?
先天性股関節脱臼の後遺症は、適切な治療を受けずに放置をしてしまうことでリスクが高まり、股関節の軟骨がすり減って変形する障害のことを言う、変形性股関節の後遺症が出やすくなります。
もし、適切な治療を受けずにいると、成人までは症状が出なくても、早い場合には20代で何らかの症状を感じ始め、加齢と共に股関節周辺の組織の変性を招き、最終的には変形性股関節症へ移行する流れとなるでしょう。
変形性股関節症についてはこちらをご覧ください。
→変形性股関節症の予防方法と症状が出てしまった時の対処法とは!?
→変形性股関節症でしてはいけないこと、運動療法や手術を詳しく解説!
出産が原因?
先天性股関節脱臼の原因は、出産時にも何らかの因果関係があると考えられていますが、出産時の原因については明らかにされていないのが現状です。
お母さんがお子さんの脱臼を「自分のせい」と思われる方がとても多いようですので、そのような時には周りの温かいサポートをしていただければと思います。
赤ちゃんが大人になったら影響は?
先天性股関節脱臼の赤ちゃんが大人になったときの影響として、
- 股関節の不安定さ
- 歩行が不安定
- 膝が上がらないため、転倒などのリスクが高まる
- 足の角度が左右で異なる
- 車の乗り降りや階段など、股関節を上げる時に不都合を生じる
- 自立歩行が難しくなることも
などの影響が出るケースもあるため、早期発見と治療が重要なのです。
適切な時期に、適切な治療・施術を受けることで大人になったときのさまざまな影響を減らすことは可能です。
赤ちゃんの時期はもちろん、大人になってからも何かしらの異変に感じた時には先生に診てもらいましょう。
抱っこの仕方は?
赤ちゃんの正しい抱っこの仕方は、
- 両ひざ
- 股関節
を曲げてM字開脚にした姿勢の「コアラ抱っこ」が基本となり、赤ちゃんが自由に足を動かせる環境へと整えていくことが大切です。
最近の抱っこ紐は自然と正しい抱っこになるような形状ですし、長い時間抱っこしているとお母さんの負担も大きくなってしまいます。
そのような時には抱っこ紐で赤ちゃんを抱っこしながら生活すると双方にとっても負担なく過ごせるでしょう。
大人でもリハビリや治療は必要?
先天性股関節脱臼が残存したままの状態の場合は、大人になると強い痛みを感じたり、股関節がスムーズに動かないなどの影響が出やすくなる傾向です。
そのような時は先生と相談し、症状に対して適切な治療・施術を慎重に選びながら進めていきます。
もし、股関節周辺に変形などが進行していなければ、治療・施術により生活に支障ない程度まで軽減するでしょう。
こちらも参考にしてみてください。
→変形性股関節症の予防方法と症状が出てしまった時の対処法とは!?
大人になった時の筋トレ方法はあるの?
先天性股関節脱臼による強い痛みがない場合は、股関節まわりの筋肉を鍛えられる筋トレ・スクワットなどが効果的でしょう。
先生と相談しながら行うと理想的です。
ここでは日常的に痛みがない場合の筋トレをご紹介いたします。
- 何かを支えにして股関節と膝を90度に曲げる
- 膝を上下に上げ下げ
- 30回ほど行う
膝の上げ下げの角度は80〜100度くらいの範囲を動かすと効果的です。
この筋トレは股関節の動きに大きく関与する「腸腰筋」へんアポローチになります。
腸腰筋が発達、または機能すると股関節の動きを安定させて、動きもスムーズになるため、とても大切な筋肉なのです。
腸腰筋について詳しくはこちらをご覧ください。
→反り腰の原因や改善する方法とは?ストレッチや運動を徹底解説!
このほか、プールでの歩行訓練も股関節に負担をかけずに筋力アップが望めます。
週に3度程のプールでの水中歩行もオススメです。
リハビリでの禁忌は?
リハビリでの禁忌は股関節を内側にひねる動作となり、股関節に負担がかかる無理な動きに気を付けてリハビリを行うようにしましょう。
大人になっても手術はあるの?
先天性股関節脱臼が残存したまま大人になった場合は、赤ちゃんの時期には見られなかった股関節の痛み、動きがスムーズにならない、または股関節にかかる負担により、組織が変性してくると手術が必要になるケースもあります。
組織の変性は股関節の負担の軽減や適切な施術により避けられるケースも多々ありますので、「いつか治るだろう…」と思わずに積極的に施術や運動をおこなっていただければと思います。
【まとめ】先天性股関節脱臼について
本記事では先天性股関節脱臼について、原因や症状、主な治療法などをお伝えしてきました。
先天性股関節脱臼による大人になってからの影響を残さないため、定期検診を受けることはもちろん、お子さんの異常に気づいた際にはすぐに先生に相談、診てもらいましょう。