手根管症候群の治療は手術が最善?体験談からの読み解きと手術失敗のリスク
カテゴリー:肩・肘・手首の痛み
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手首から指にかけて痛みやしびれはありませんか?
もしかするとその症状は手根管症候群かもしれません。
手のしびれを訴えて来院される方では最も一般的な手根管症候群。
「手根管症候群の治療は手術が最善?体験談と手術失敗のリスクとは?」を読んでいただき、最善の対処をしていただければと思います。
Contents
手根管症候群の原因と症状
正中神経が手首(手関節)にある手根管というトンネル内で圧迫された状態です。それに手首(手関節)の運動が加わって手根管症候群は生じます。
正中神経は指を動かす9本の腱(筋肉と骨をつなぐもの)と一緒に手首の手根管という細い管を通ります。
手根管の組織を構成する組織が何らかの原因で厚くなり、正中神経が圧迫されて様々な症状が出てくるのが手根管症候群です。
正中神経の支配する領域はこちらになります。
手根管症候群の原因
手根管症候群の原因としては
- 関節リウマチ
- 長期間の人工透析
- 手首の骨折による腫れやむくみ
- 妊娠
- 手根管内の腫瘍
- 糖尿病
- 腎疾患
- 痛風などホルモンや代謝性疾患などの影響
でなりやすいことがわかっています。
ですが、上記の原因は一部であって、実はほとんどの原因はわかっていません。
40代以降に多く、男性よりも女性に多い疾患という点でさらに詳しくみていくと、
- 家事や仕事などで手首や手指を使うことが多く休む時が少ない
- 手根管のトンネルが男性より狭い
- ホルモンなどの影響を受けやすい
ということが当てはまります。
女性は家事や仕事でものを握ったり掴む作業が実は多く、細かく見ると掃除や料理の際などには包丁やスポンジ、フライパンなどを握る動作、仕事ではパソコン作業のキーボード、介護職など強い力で掴むということがとても多いのです。
日々の積み重ねやホルモンの影響、そして筋肉疲労による手関節の内圧の上昇などが複合的に合わさるので40代以降の女性に多いと考えられます。
もちろん男性にも現場仕事の方がなりやすい傾向にありますが、家では安静にできたり、仕事を休むことができるため、女性よりは休める時間があるのも手にとってはプラスになって、手根管症候群にはなりにくい要因となるのでしょう。
手根管症候群の症状
手根管症候群の症状には、
- 手のひら、親指から中指のしびれ
- ものを掴む・握る時の手首の痛みや手のしびれ
- 手のひらや指の感覚低下(触った時に鈍い感覚)
- 夜間や明け方に痛みやしびれが強くなる
- 時には何もしなくても痛い
- 親指の筋肉がやせてくる
などの症状があり、日常生活では
- 小さいものが掴みにくい
- ボタンかけがしにくい
- コップなどが持ちにくい
- 針仕事ができない
- ペットボトルが開けられない、
などのような状態になるのです。
寝ている間、人は無意識に手を握っていることで夜間や明け方に症状が出るものと考えられています。
正中神経は皮膚の感覚と筋肉を支配する神経で、この神経が障害を受けると上手に筋肉に刺激が入らないため、青丸部分の筋肉がやせていき親指は次第に動かせなくなっていきます。
手根管症候群の手術体験談
手根管症候群による手術を受けた方の体験談をご紹介します。
患者さんによって症状の違いや感じ方、医師による技術の差もありますので、体験談は一つの参考にしていただければと思います。
体験談に多いのが、
- 最初の麻酔が痛い
- 出血を抑える腕の圧迫が痛い
- 時間的に短く感じる
- 麻酔がきれると痛い
- 手術後は腫れる
- 手術後にスッキリと症状がなくなるわけではない
患者さんは手術を受けるとすぐにすっきりと症状がなくなると思ってしまいがちですが、手根管症候群はそうはいかないようです。
早い人は手術翌日より症状の軽減がみられますが、おおよその期間としては3ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要となり、筋肉が萎縮している場合にはより長い日数を要します。
長い期間がかかる理由には、神経の再生速度にあります。
神経の再生過程では感覚も過敏になり、しかも神経の再生は1日1ミリと非常に遅いことも長い期間を要する理由です。
皮膚を切開するので手術後は手首周辺が腫れて、その腫れが治るまでのタイムラグも症状がなくなるまでの時間と大きく関係します。
手根管症候群の手術で失敗すると…
手根管症候群の手術は神経の近くの組織にアプローチします。
もし術中の神経損傷などで神経を傷つけると重篤な合併症の可能性があります。
- 手のひら、親指〜薬指の一部の感覚障害
- 手首や指が曲げられない、または曲げづらい
- 親指の筋肉の萎縮
- ジンジンするようなしびれ(特に中指)
- 指で物がつかめない、つまめない
など生活にも支障をきたす症状が残ってしまいます。
手術を受ける際には
- 症例数が豊富
- きちんと説明をしてくれる
- 患者さんの話を聞いてくれる
医師を選びましょう。
もし手術で失敗してしまったら一生残る後遺症ですので、納得の上で手術は受けましょう。
手根管症候群の手術費用
さて、手根管症候群の手術費用はみなさん気になるところではないでしょうか。
病院では「1点を10円で換算」します。
手根管開放術の点数は4110点ですので、41100円です。
負担割合別に見てみましょう
窓口支払い金額 | |
3割負担 | 12,330円 |
2割負担 | 8,220円 |
1割負担 | 4,110円 |
となります。
この金額はあくまでも手術における手技料のみですので、使用した物品により変動がありますのでご了承ください。
生命保険の日帰り手術プランに加入していると最終的には手出しがないこともありますので、今一度プランを見直してみてはいかがですか?
手根管症候群の検査法と治療方法
手根管症候群を他の疾患と見分けるための検査法が3種類ほどあります。
検査方法には
- チネル兆候
- ファーレンテスト
- ダルカン兆候
があり、このほか画像診断などと総合的に判断して手根管症候群と医師より診断されます。
では3種類の検査方法をご紹介します。
その場で行えますので、心配な方は行ってみましょう。
チネル微候
緑丸辺りを硬いもので叩きます。
叩くと痛みやしびれが指先に響くと陽性です。
チネル微候で陽性になると尺骨(しゃっこつ)神経、橈骨(とうこつ)神経、胸郭出口症候群の疑いがあります。
もし、検査をして陽性症状でしたらすぐに病院に受診しましょう。
ファーレンテスト
ファーレンテストも手首に刺激を加える検査方法です。
手の甲を合わせて深く曲げてみましょう。
この状態で指がしびれると陽性となります。
手首が硬い方が行うと、この検査方法では陽性症状が出ることもあるので、あくまでも一つの指標として捉えておきましょう。
ダルカン微候
ダルカン微候も手首を圧迫する検査方法です。
指で手首を押してみましょう。
押してみて手のひらや指先に痛みやしびれがあるときには陽性となります。
手首を圧迫して何かしらの症状が手のひらや指先に現れると手根管症候群の疑いが強くなるという認識でよいでしょう。。
手根管症候群の治療法
治療法の第一選択肢としては安静と固定、そして注射による薬物治療になります。
ですが病院の初診時点ですでに親指の筋肉が萎縮している場合には、すぐに「手根管開放術」という手術の選択となります。
このほか、難治性や腫瘍の場合にも手術での治療が必要です。
切開する長さは術式により違いはありあますが、大きくても3センチ前後で、大きく傷跡が残ることもほとんどないでしょう。
30分以内の手術時間が多く、局所麻酔による日帰り手術で、手術日より水仕事以外は指を使うことも可能です。
手根管症候群に効果的なツボ
手根管症候群に効果的なツボをご紹介します。
使うツボは
- 内関(ないかん)
- 郄門(げきもん)
- 孔最(こうさい)
の三つのツボになります。
正確な場所を見つけるのはとても難しいので、大体の位置でも構いません。
手術後すぐは固定をしているために行えませんが、固定が弱くなってきたら次第に行って刺激を入れていきましょう。
それぞれのツボはただ押すだけではなく、押しながら指をグーパーしたり、手首を上下に動かすとさらに効果的です。
押す強さは硬さを感じるくらい、または少し痛い程度の強さにします。
手首を動かすとツッパリ感や手首の硬さを感じる場合もありますので、指のグーパーから始めて、押している箇所が緩んできたら手首を上下に動かすと良いでしょう。
手根管症候群の手術後のリハビリ
手根管症候群の手術後のリハビリは、包帯やギプスによる固定、腫れやむくみ、そして切った傷の痛みがあるので最初のうちは指の曲げ伸ばしなどの小さい動きしかできません。
細かい動きのリハビリは固定されているときに行うと、そのあとの日常生活が楽になります。
大きな動きは取り戻しやすいのですが、摘むなどの小さくて細かい動きを取り戻すのは簡単ではありません。
固定により大きな動きができないときには、小さくて細かいリハビリを行うには最適な時期ですので、丁度良い機会を逃さないようにしっかりとリハビリを行いましょう。
手根管症候群に良いサポーター
手根管症候群に良いサポーターは手首を支えてくれる物がオススメです。
サポーターについてはこちらをご覧ください。
作業量にもよりますが、固定が強ければ強いほど手首への負担は軽減されますがその反面、固定が強いと動きに不自由さも出てくるので、作業量と内容に合ったサポーターをみつけましょう。
手首の固定には同時に親指を固定すると強度が高まりますので、手首だけの固定よりも親指を含めたサポーターの方をした方が良いです。
手首が自由に動くというのは手首に負担をかけることにもなりますので、手術後ある程度の期間が経過してから使い始めると良いでしょう。
サポーターをしなくなる時期の見極め方は【サポーターをしていて邪魔に感じるとき】です。
サポーターが邪魔に感じたときには外しても良い時期と判断します。
力仕事の場合には手首への負担軽減をできるだけした方が良いので、外さずに付け続けることをオススメします。
主婦の方に必要なのはサポーターよりも手を使わない休息の時間です。
家事は分担したり、食器洗い洗浄機や自動掃除機などの文明の力を使って楽ができる時間を作りましょう。
手根管症候群に効果的なテーピング
手根管症候群に効果的なテーピングの貼り方をご紹介します。
片手では難しい場合もありますので、誰かに貼ってもらうと良いでしょう。
親指の保護と手首の固定が目的となります。
使用するテーピングのサイズは50ミリと3,75ミリです。
50ミリのテープをこのように切り、指を通すところを作ります。
このように貼ります。
次に親指を固定するテーピングです。
手首から始まり、親指を1周して手首で終わります。
きつく貼ると症状が出てしまいますので「少し緩いかな?」くらいの強さで貼ってみてください。
慣れてくると強さも調節できるようになりますので、何度か貼って丁度よい強さをみつけましょう。
手根管症候群について正しく知って正しい対処をしましょう
手根管症候群は毎日の生活だけでも自然となってしまう疾患です。
防ぐ方法は使わない時間を作って休息をする、ですが、なかなか女性には難しい面もあります。
痛いときには手伝ってもらって、早く良くなるように行動をしていただけるのが最善の対処でしょう。
手術は最終手段です。
その前に正しい治療・施術を受けていただければ手術は回避できますので、我慢はせずに適切な処置を受けていただければと思います。