骨盤の剥離骨折について。原因や症状、早く治す方法を解説します
カテゴリー:身体のいろいろな不調
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骨盤の剥離骨折は、骨が弱く成長が十分ではない若い世代に多く見られる傾向にあり、裂離(れつり)骨折とも呼ばれていてスポーツ障害のひとつです。
ここでは骨盤の剥離骨折がどのような骨折なのか、原因や症状、早く治すための方法や疑問にお答えしていきたいと思います。
Contents
骨盤の剥離骨折について
まずは骨盤の剥離骨折についてですが、
- 若い世代に起きやすい
- スポーツ障害
であることはすでにお伝えしました。
原因や関係する筋肉、症状は部位によって違いがありますので、それぞれ見ていきましょう。
原因
骨盤の剥離骨折は、成長期の子どもにある成長軟骨と言う骨が、筋肉の収縮に伴う腱の強い張力に耐え切れないことが原因で裂離して発生します。
骨の成長と筋肉の収縮の強さの関係が原因の骨盤の剥離骨折は、
- 陸上
- サッカー
- 野球
などのスポーツで起きやすく、主に瞬発系のスポーツに生じやすい傾向です。
瞬発系とは突然強い力を発揮することで、ジャンプ着地や急停止、急なダッシュなどの動作で多く行われます。
部位と関係する筋肉
骨盤の剥離骨折の関係する筋肉には、
1:骨盤や股関節の動き、曲げ伸ばしをサポートする太腿筋膜張筋(左)、縫工筋(右)
2:太ももの動きをサポートする太腿四頭筋
3:膝を曲げる際に働く太ももの裏側の筋肉ハムストリング
があり、骨盤の剥離骨折では、これらの筋肉に繋がっている腱が強く骨を下に引っ張って負荷をかけることで生じるのです。
症状
骨盤の剥離骨折の症状には、
- スポーツで身体を動かした瞬間、または運動後に骨盤やお尻に痛みを感じる
- スムーズな歩行ができない
- 膝が上げにくい
- 立ち続けることができない
- 骨盤の剥離骨折が生じた部位に腫れや皮下出血、圧痛がある
などなど。
骨盤の剥離骨折は、場合によっては、剥がれ落ちた骨の骨が通常の位置からずれてしまい、感覚障害・歩行困難などに陥ることも。
一度の強い動作で起きることもあれば、金属疲労のように繰り返しの動作で骨が剥離してしまうこともあります。
骨盤の剥離骨折には、
- ダッシュ、走り幅跳びなどで縫工筋や太腿筋膜張筋が過度に収縮する「上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)裂離骨折」
- キック、短距離走などで太腿直筋が収縮する「下前腸骨棘(かぜんちょうこつきょく)裂離骨折」
- 全力疾走、ハードル競技などが原因となり、ハムストリングや大内転筋が収縮する「坐骨結節(ざこつけっせつ)裂離骨折」
などがあります。
画像は、高校生で陸上選手の上前腸骨棘の剥離骨折です。
左が剥離骨折を起こしていて、右のように白く綺麗には映らず、骨が損傷している様子がわかります。
大きさにして4ミリですが、この時の症状では
- 膝が上げらない
- 歩くときに違和感
- 内出血はないものの、押すと痛い
- 走れない
などの症状でした。
骨盤の剥離骨折を早く治す方法
骨盤の剥離骨折を早く治す方法をお伝えしていきます。
是非とも参考にしてください。
固定をする(動かさない)
骨盤の剥離骨折は、骨折部位がケガをする前の状態と同じようにくっついていないと、癒合しにくいです。
強い痛みがなかったとしても固定を行い、患部に負担のかからないように過ごします。
ですが剥離骨折を起こす部位は固定が非常に難しいので、ギプスではなくテーピングで筋肉と患部を通るように貼ると良いでしょう。
上前腸骨棘の剥離骨折の場合には、下記のように貼ってみてください。
安静を維持し、適度に刺激を与える
骨盤が剥離骨折を起こしているため、症状や患部の状態が落ち着くまでは安静が必要です。
程度にもよりますが、早いものでは数日、完全に骨同士が離れてしまった剥離骨折の場合には数週間の安静を維持し、患部を無理に動かさないように気を付けましょう。
炎症期が過ぎ、少しずつ動けるようになったら適度な運動を始めます。
動けるぐらいになってきたら、適度な運動によって患部の血行を促進して骨の癒合を早めるのです。
剥離骨折を骨折を早く治す方法の詳しくはこちらをご覧ください。
→剥離骨折を早く治す方法をご紹介!大切なのは適切な固定と適度な刺激!
骨盤の剥離骨折に関する疑問
続いては、骨盤の剥離骨折に関する疑問にお答えしていきます。
子供でも起きるの?
骨盤の剥離骨折は、力学的に弱い成長軟骨が多く存在した場所に起き、身体が成長しきていない中学生や高校生に見られる傾向があります。
小学生でも成長が早く、しかも強度の強い練習を続けていると骨盤の剥離骨折を起越してしまうケースもありますので、練習量の調節は必要です。
関連記事はこちら。
後遺症はあるの?
骨盤の剥離骨折の後遺症には、
- 骨盤やそのまわりが動かしづらくなる機能障害
- 骨折した骨盤の骨が変形して付着する変形障害
- 痛みやしびれが長期にわたって続く神経障害
などがあるため、早い段階で固定や安静などの保存療法が必要になります。
ですが、きちんと安静とテーピングによる固定を行えば、上記のような後遺症は残りにくいでしょう。
骨折部がしっかりくっ付くまでは、先生の指示に従って日常生活を過ごせば問題ありません。
スポーツ復帰まで全治何ヶ月?
骨盤の剥離骨折を生じると、
- 患部がもとに戻るまでは10日程度
- 2~3週間で軽い歩行
ができるようになり、スポーツ復帰は個人差があるものの2~3ヶ月の期間がかかります。
先程の高校生の陸上選手は患部の損傷が小さく、骨折面が完全に離れていないこととにより3回の施術と合計4日間で、通常の練習に復帰をしました。
患部の状態と症状の出方には比例するわけではないので、それぞれを照らし合わせながら治療・施術を進めていくと復帰も早くなります。
早い段階で適切な処置を行えば長期化は防げますので、何かしらの痛みや異常を感じたら先生に見てもらいましょう。
骨盤以外でも剥離骨折は起きるの?
剥離骨折は、
- 肘
- 膝
- 足首
- かかと
などの骨盤以外の部位にも起こることがあります。
強い力が加わり、そこに着く腱が引っ張るような動作が起こる部位で剥離骨折は起きるのです。
肘では野球、膝やかかとはジャンプ動作や急停止・ダッシュをする競技、足首は捻挫によって最も起きます。
足首の剥離骨折についてはこちらをご覧ください。
→足首の剥離骨折で行うリハビリとは?早く治す方法と疑問にお答えします
骨盤の剥離骨折の治療法
骨盤の剥離骨折の治療法は、
- 保存的治療によって離れた骨折面同士を離れないようにする
- 痛みや腫れが強い場合は鎮痛剤や湿布の使用
- 歩行時には松葉杖を使う
- 剥離骨折を起こした筋肉を緩める
などがあります。
固い筋肉を緩める方法はこちら。
→筋肉を柔らかくするセルフ施術をご紹介!筋肉にオススメのプロテイン3選
また骨盤の剥離骨折の応急処置には、
- アイシング、圧迫固定する
- 安静
などになるでしょう。
アイシングについて詳しくはこちらをご覧ください。
→アイシングを効果的にする方法、時間と回数、やりすぎない為の注意点
骨盤の剥離骨折の予防法
骨盤の剥離骨折を予防するための方法をあらかじめ知っておけば、たとえ一度なってしまっても怖くはありません。
是非とも実践していただければと思います。
規則正しい生活と骨に良い食事を心がける
骨盤の剥離骨折は、
- カルシウムやタンパク質などを摂取し、骨に良い食事を心がける
- 適度な運動
- 休息
- 日光を浴びる
の4つを行うことで、誰もがもともと持っている自然治癒力が高まり、剥離骨折の早い回復につながるでしょう。
また成長期の中・高校生が特に好む炭水化物(糖質)は、
- 骨の癒合を妨げる
- スムーズな関節の動きに働きかけるコラーゲンを破壊
してしまうため、過剰な摂取や間食の摂り過ぎに注意しましょう。
詳しくはこちらをご覧ください。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
スポーツ前後の準備運動を欠かさないこと
スポーツに復帰した後は、骨盤の剥離骨折を予防するためにも、骨盤まわりの筋肉・股関節の柔軟性を活かす準備運動を欠かさないようにしましょう。
時に寒い時期には、剥離骨折のリスクだけでなく、肉離れなど筋肉系のケガが多くなる傾向です。
身体が充分に暖まってから強度の高い練習を始めましょう。
肉離れについてはこちらをご覧ください。
→肉離れの治療期間は?症状別に治るまでの期間や早く治すコツをご紹介。
→ハムストリングの肉離れが完治せず、慢性的に痛み、治らない原因
【まとめ】骨盤の剥離骨折について
本記事では骨盤の剥離骨折の原因や症状、予防策などについてお伝えしてきました。
成長期の中・高校生がのびのびと安心安全にスポーツを楽しむことができるよう、親御さんも一緒に骨盤の剥離骨折の基礎知識を理解、把握していただければと思います。