胸鎖関節脱臼とは?原因や分類、治し方や疑問にお答えします!
カテゴリー:身体のいろいろな不調
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胸鎖関節脱臼(きょうさかんせつだっきゅう)は、胸骨と鎖骨によって構成されている胸鎖関節(緑丸)が何かしらの要因によって、もともとの位置からずれてしまうケガのことを言い、肩や顎の脱臼に比べると発症は稀な傾向です。
ここでは胸鎖関節脱臼について、原因や分類、治し方や疑問アレコレにお答えしていきたいと思います。
「脱臼ってそもそもナニ!?」という方はこちらをご覧ください。
→脱臼とは?状態や原因、起きやすい部位や治療法について解説します
Contents
胸鎖関節脱臼とは
胸鎖関節脱臼とは、肩や顎の脱臼に比べると頻度はそこまで多くはないものの、「脱臼」ですので決して油断はできません。
ここでは胸鎖関節脱臼の主な原因や分類、症状について見ていきましょう。
胸鎖関節脱臼の他に起きやすい脱臼である「肩鎖関節脱臼」についてはコチラ。
→肩鎖関節脱臼とは?原因や分類、リハビリや治療法など詳しく解説。
原因
胸鎖関節脱臼は、
- 腕や肩に対して作用する、後方への過度な力によるもの
- 物を投げるスポーツなどの動作による筋力作用
- 関節技などで腕を後ろに回されるような強い力が働いた
場合に生じるケースが多く、事故や転倒、スポーツなどが主な原因です。
胸鎖関節は身体の他の部位に比べると、年代や性別にかかわらずにその周辺にある靱帯がしっかりしているため脱臼が起こりにくい傾向ですが、著しく強い力が加わった際には靭帯が断裂して脱臼が生じます。
捻挫や脱臼の際に必ず起こす「靱帯損傷」について詳しくはこちらをご覧ください。
→靭帯損傷とは?症状や治療法、早く良くなる方法を解説します。
分類
胸鎖関節脱臼には、
- 胸鎖関節脱臼の最多であり、胸鎖関節が前方に逸脱した状態の「前方脱臼」
- 発生頻度は少ないものの、生じると観血的治療が必要になるケースがある「上方脱臼」
- 胸鎖関節脱臼のまれなケースとなり、胸鎖関節が後方にずれた状態のことを言う「後方脱臼」
- 胸鎖関節の関節面が完全に外れた状態のことを言う「完全脱臼」
の分類があり、それぞれの症状や痛みの出方によって整復法や治療・施術は変わるでしょう。
上方脱臼の際に必要な「観血的治療」というのは手術になり、脱臼によって切れてしまった靭帯は自然修復されませんので、脱臼部位の整復と靭帯の修復が行われます。
肩関節脱臼にも分類がありますので、関連記事としてご覧ください。
→肩関節脱臼について。状態や原因、整復方法や治療法を解説します
症状
胸鎖関節脱臼の主な症状には、
- 患部周辺の痛みや内出血・腫れ
- 圧痛
- 肩や腕を動かした時の痛み
- 寝返り時の痛み
- 明らかな、または僅かな骨の突出
などがあるでしょう。
また胸鎖関節脱臼が生じると、首から胸鎖関節につながる胸鎖乳突筋(緑矢印)の動きにより「痛みで首を傾けられない」などの症状が出るケースもあります。
子どもの場合の胸鎖関節脱臼は骨や関節がやわらかいため脱臼が起こらず、関節に近い場所で折れてしまうケースもあるでしょう。
子供の骨折に多い「若木骨折」について詳しくはこちらをご覧ください。
→若木骨折とは?子供に多い手首骨折の治癒期間やリハビリを詳しく解説
胸鎖関節脱臼の治し方
胸鎖関節脱臼の治し方はどのようなアプローチ方法があるのでしょうか。
胸鎖関節は固定が難しいなどの理由もあり、一度脱臼をしてしまうと変形が残りやすい部位です。
胸鎖関節脱臼で心配な変形を残さないためにも、ここでは主な治し方について一緒にチェックしてみましょう。
鎖骨についての後遺症はこちらをご覧ください。
→鎖骨骨折の後遺症とは?治療法や全治期間、よくある疑問にお答えします
整復法
著しい脱臼(変形)がある場合には、肺などの内臓損傷のリスク回避を第一に手術が選択されますが、程度が小さい変形の際には、痛みの出方や状態、性別などにより徒手整復によって対応するでしょう。
胸鎖関節脱臼の整復方法は、前方・後方・完全脱臼と、それぞれの状態に合わせた整復法が選択されます。
それぞれ整復後は、バンドやリング状の専用の固定材を用い、胸を張った姿勢で固定をしながら4~5週間程度の安静を維持しましょう。
胸鎖関節脱臼の完全脱臼は、整復による固定が難しいケースがありますが、万が一に変形が残っても機能障害などの後遺症は残らないことがほとんどだと言われています。
腕への衝撃で起こる肘の脱臼も関連記事としてご覧ください。
→肘関節脱臼について。原因や症状、治療法と全治期間の目安を解説。
固定期間
胸鎖関節脱臼が初めての場合は、脱臼時に断裂した関節包や周りの軟部組織が修復するまで個人差もありますが、およそ3~6週間程度の固定が必要でしょう。
胸鎖関節脱臼は、発生してから早めの整復・正しい固定姿勢、期間を守らないと、再脱臼するリスクが高まるため、先生の指示に従って焦らずに進めていくべきです。
変形を残さないためにも肩や腕を大きく動かさない、寝る姿勢などにも気を配る必要があるでしょう。
リハビリ
胸鎖関節脱臼のリハビリは、固定後より徐々に肩や腕の動かす範囲を広げていくことがリハビリになります。
筋力トレーニングやストレッチよりも、まずは日常生活で普通を通りに動かせるように刺激を入れていきましょう。
特に
- 物を持って腕を広げたり、上げる動作
- 寝返りの際に、肩を潰しても痛くない
などが行えれば日常生活に支障なく過ごせると判断できます。
その後はより負荷をかけた運動の動作や筋トレなどをおこなっていくとスムーズに復帰する流れとなるでしょう。
テーピング
胸鎖関節脱臼時にテーピングで患部を固定すると、変形の予防と痛みの軽減に繋がります。
方法は至ってカンタンで、
- 首を脱臼した方向を向き、胸を広げる
- 1の状態で患部をやや斜め上から下にテーピングを貼る
ポイントは【首の向きと胸を広げた状態】でテーピングを貼ることです。
首を痛い方へ向けると胸鎖乳突筋が緩み、胸鎖関節が引っ張られる力が軽減します。
同時に胸を広げると胸鎖関節への余計な圧迫も軽減され本来の位置に戻りやすくなるため、正しい位置での固定が可能となるのです。
胸鎖関節脱臼についての疑問アレコレ
続いて胸鎖関節脱臼に関する疑問アレコレにわかりやすくお答えしていきたいと思います。
胸鎖関節が飛び出ているけど…
胸鎖関節脱臼後に、胸鎖関節が飛び出ている状態になってしまうのは、固定が不十分で変形が残っているためです。
胸鎖関節脱臼も肩鎖関節脱臼も、脱臼を起こした方はポコっと出ている状態になるのは珍しくありません。
その理由には
- 固定が難しい
- 日常生活で腕を使うことが多い
- 痛みがなければ動かしてしまう
などが当てはまるでしょう。
女性では見た目を気にするため、日常生活でも気にする方が多いですが、男性では「痛みで動けないのか、痛くても動けるのか」だけで生活するため、形状の左右差を残したまま痛みが消えるも珍しくありません。
実際、その後の動きにも支障がないため、特に気にする必要はないとも言えます。
もう一つ、胸鎖関節が飛び出ている理由には何かしらの病気が発症している可能性も全くは否定できません。
胸鎖関節が腫れ、飛び出ているような状態が見られる場合は、
- リウマチ
- 掌蹠膿疱症性関節炎(しょうせきのうほうしょうかんせつえん)
などの可能性が考えられるため、転んだり、手をついたりした覚えがないのに、胸鎖関節に何かしらの症状がある時には病院で詳しく診てもらいましょう。
オススメのストレッチはある?
胸鎖関節脱臼を起こすと、腕を十分に広げる動作を避けるため、胸周りの筋肉が常に緊張状態となります。
痛みや症状が軽減してきたら胸を広げるストレッチを行いましょう。
- 壁に掌を胸より下につける
- 胸を開くように、身体を手とは逆方向に開く
- 気持ちよさを味わいながら行う
胸鎖関節に痛みが有るようなら、痛みを感じない程度の伸びで行いましょう。
ストレッチの方法についてはこちらをご覧ください。
→間違ったストレッチをしないために、知っておくべきこととは?
出っ張りが痛いのは普通?
胸鎖関節の出っ張りが痛いのは、
- 脱臼の際に損傷した組織がまだ修復されていない
- 何かしらの動きで関節を捻挫した
が考えられます。
脱臼後より動かす時期が早いといつまでも痛みは続きますし、一度治癒したものでも重い物を持ったり肩に再び衝撃が加わったりすると関節の捻挫を起こします。
脱臼ばかりではなく患部に無理なストレスが加わって炎症を起こしている可能性があります。
胸鎖関節脱臼では無理な動きで患部に負荷やストレスを与えないよう、適切な固定・安静期間を維持するようにしましょう。
捻挫についてはこちらをご覧ください。
【まとめ】胸鎖関節脱臼について
本記事では胸鎖関節脱臼の原因や症状、主な治療法などについてお伝えしてきました。
胸鎖関節脱臼が生じると胸鎖関節の部分にこれまでになかった突出が見られるため、異状に気付いた時点で早めの整復を受け、早期の症状軽減の治療・施術を受けるようにしましょう。