膝蓋骨骨折のリハビリ|いつから歩ける?自宅でできる運動と禁忌
カテゴリー:膝の痛み
この記事は約 10 分で読めます。
膝蓋骨骨折は、膝の前にある「お皿(膝蓋骨)」が折れるケガです。
治療後は「いつから歩ける?」「膝はどこまで曲げていいの?」「階段や仕事、スポーツにはいつ戻れる?」と不安になる方も多いでしょう。
膝蓋骨骨折のリハビリは、骨折のずれ、手術の有無、固定方法、レントゲンでの骨癒合の状態によって進め方が異なります。
早く動かせばよいわけではなく、反対に安静が長すぎても膝が硬くなり、太ももの筋力が低下するリスクが高くなります。
この記事では、膝蓋骨骨折のリハビリ内容、回復期間の目安、自宅で行う運動、やってはいけないことを、柔道整復師の立場からわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- リハビリの開始時期や曲げてよい角度は一人ひとり異なる
- 歩行や階段は「受傷後○週」だけでなく、骨の安定性・痛み・筋力で判断する
- 自己判断で膝を深く曲げたり、負荷を急に上げたりしない
- レントゲンなどで経過を確認し、医師の指示に沿って段階的に進める
リハビリについての関連記事はこちら。
→鎖骨骨折のリハビリメニューとは?リハビリ内容や禁忌、疑問にお答えします
膝蓋骨骨折とは
膝蓋骨は、太ももの前にある大腿四頭筋の力を膝蓋腱へ伝え、膝を伸ばす働きを助ける骨です。
また、膝関節の前面を守る役割もあります。
膝蓋骨が骨折すると、膝の痛みや腫れだけでなく、膝を自力で伸ばしにくい、立つ・歩く・階段を使う動作が難しいといった症状が現れます。

主な原因
- 転倒して膝を地面に強くぶつけた
- 交通事故でダッシュボードなどに膝を打ちつけた
- スポーツや作業中に硬い物へ膝をぶつけた
- 大腿四頭筋が急激に収縮し、膝蓋骨に強い牽引力が加わった
年齢や性別を問わず起こりますが、転倒しやすい高齢者や、接触・転倒を伴うスポーツを行う方では特に注意が必要です。
主な症状
- 膝前面の強い痛み、腫れ、内出血
- 膝を曲げ伸ばしできない、または動かしにくい
- 膝に力が入らず、立てない・歩けない
- 膝蓋骨を押すと強く痛む
- 骨折部の段差や隙間を触れることがある
膝を強打したあとに歩けたとしても、骨折を否定できるわけではありません。
強い腫れや痛み、膝を伸ばせない症状がある場合は、早めに整形外科で画像検査を受けましょう。
膝蓋骨骨折の治療法
治療は大きく「保存療法」と「手術療法」に分けられます。
保存療法
骨片のずれが小さく、膝を伸ばす仕組みが保たれている場合に検討されます。
膝を伸ばした状態でギプスや装具を使用し、骨折部を安定させます。
固定中でも、状態や症状により医師の許可があれば足首の運動や大腿四頭筋の軽い収縮運動などを始めることがあるでしょう
膝を曲げる時期と角度、体重をかけてよい範囲は、画像所見を確認しながら決めていくのが一般的です。
手術療法
骨片のずれが大きい、関節面に段差がある、膝を自力で伸ばせない、開放骨折などの場合には手術が検討されます。
ワイヤー、スクリュー、プレート、強い糸などで骨片を固定する手術が検討されるでしょう。
「強くぶつけていなければ保存療法で十分」とは限りません。
治療法は受傷原因だけでなく、骨折箇所のずれ、関節の動きや状態などからドクターが判断します。
膝蓋骨骨折のリハビリはいつから?
リハビリは固定中から始まる場合や固定が外れてからなど、患部の状態と症状に合わせて行います。
| 段階 | 主な目的 | リハビリの例 |
| 固定・保護期 | 骨折部を守り、腫れと筋力低下を抑える | 足首運動、大腿四頭筋の収縮、松葉杖練習 |
| 可動域回復期 | 膝の曲げ伸ばしを徐々に戻す | 許可された角度内での屈伸、膝蓋骨周囲や軟部組織への対応 |
| 筋力回復期 | 臀部・太もも股関節周辺・ふくらはぎの筋力を戻す | セッティング、脚上げ、カーフレイズ、段階的なスクワット |
| 動作・復帰期 | 歩行、階段、仕事、競技動作を取り戻す | 段差練習、片脚動作、バランス、走行・ジャンプ練習 |
これは一般的な流れであり、週数だけで次の段階へ進むものではありません。
診察と画像検査で骨折部位の症状と状態を確認しながら進めていきます。
膝蓋骨骨折で行う主なリハビリ
1.腫れと痛みへの対応
受傷直後や手術後は腫れが出るため、患部を心臓よりやや高く保ち、指示がある場合は冷却を行います。
装具や包帯がきつく、足先のしびれ・冷たさ・色の変化が出た場合は、すぐに医療機関へ相談しましょう。
2.関節可動域訓練
固定期間が長いと、膝関節周囲の組織が硬くなりやすくなるため、骨折部位の安定性を確認しながら、許可された範囲で少しずつ膝を曲げ伸ばしを行います。
痛みを我慢して強く押し込む、いきなり正座する、反動をつけて曲げる方法は避けてください。
曲げてよい角度が決められている場合は、その範囲を必ず守りましょう。
3.大腿四頭筋のトレーニング
膝を固定すると、太ももの前の筋肉は短期間でも低下しやすくなります。
代表的な運動が「大腿四頭筋セッティング」です。
- 仰向けまたは脚を伸ばして座る
- 膝の下に丸めたタオルを入れる
- 膝裏でタオルを軽く押しながら、太ももの前に力を入れる
- 数秒保ち、力を抜く
骨折型や手術内容によっては大腿四頭筋に強く力を入れる運動を制限する場合がありますので、開始前に必ずドクターの許可を得てから行いましょう。
4.歩行訓練
歩行訓練の開始時期と荷重量は一律ではなく、膝を伸ばした装具をつければ早期から荷重できる場合もあれば、骨折部を守るため免荷や部分荷重が必要な場合もあります。
松葉杖の高さや使い方が合っていないと、転倒や肩・手首の痛みにつながるため、正しい使用方法の指導を受け、許可された荷重量を守りましょう。
5.筋力・バランストレーニング
骨癒合と可動域が進んだら、カーフレイズ、椅子からの立ち座り、浅いスクワット、段差昇降、片脚立ちなどへ段階的に行いましょう。
膝の痛みや腫れが運動後から翌日に増える場合は、負荷が強すぎる可能性があります。
回数、深さ、速度、抵抗を一度に増やさず、ひとつずつ確認しながら行ってください。
6.ストレッチ
リハビリ初期は膝を無理に曲げず、許可された範囲でふくらはぎや太もも後面の柔軟性を保ちます。
膝の曲げ伸ばしが進んでから、必要に応じて太もも前面のストレッチを加えていきましょう。
入浴中の正座は膝に大きな曲げ角度と負荷がかかるため、自己判断では行わないでください。
自宅でできるリハビリ
自宅運動は「担当医または理学療法士から許可された内容」を行うことが前提です。
- 足首の曲げ伸ばし
- 大腿四頭筋セッティング
- 膝の曲げ伸ばし(指示された角度内)
- 脚上げ運動(膝をまっすぐ保てる段階)
- カーフレイズや立ち座り(荷重許可後)
運動中に鋭い痛みが出る、膝が急に腫れる、熱感が強くなる、翌日まで症状が増える場合は中止し、担当医へ相談しましょう。
やってはいけないこと・禁忌
- 許可された角度を超えて膝を無理に曲げる
- 医師の許可なく体重をかける、装具を外す
- 深いスクワット、正座、膝立ちを早期に行う
- 痛みや腫れを我慢して運動を続ける
- 自己判断でリハビリを中止する、内容を変更する
- 骨癒合の確認前に走る、跳ぶ、急停止・方向転換を行う
特に膝を曲げた状態では、大腿四頭筋から膝蓋骨へ大きな力が加わります。
「動かせるから大丈夫」と判断せず、画像所見とドクターの指示を優先してください。
回復期間と日常生活への復帰目安
回復期間は骨折の程度や治療法によって大きく異なり、一般的に、日常生活へ戻るまで3〜6か月程度かかることもありますが、個人差によっては短くもなりますし、重症例ではさらに長くなる場合があるでしょう。
いつから歩ける?
膝を伸ばした装具を使用し、医師の許可があれば早い時期から歩行練習を始める場合もあるでしょう。
一方、骨折部位が不安定な場合は荷重を制限し落ち着くまで免荷で過ごすことになります。
固定が外れた日が、そのまま通常歩行の開始日になるとは限りませんので焦らずに進めていきましょう。
階段はいつから?
次の条件を確認しながら練習を始めます。
- 医師から必要な荷重が許可されている
- 膝折れせず立脚できる
- 必要な膝の曲げ伸ばしができる
- 運動後に痛みや腫れが強くならない
初めは手すりや杖を使います。
一般に、上りは負傷していない脚から、下りは杖と負傷した脚から動かすと安全です。
自己判断で急がないようにしましょう。
仕事・車の運転はいつから?
デスクワークと立ち仕事では必要な機能が異なり、運転は乗り降りが安全にできることに加え、急ブレーキを迷わず踏める筋力と反応が必要です。
右膝の骨折や装具装着中は特に注意し、医師と保険会社にも確認してください。
スポーツ復帰はいつから?
骨癒合だけでなく、可動域、筋力、片脚での安定性、走る・跳ぶ・止まる動作を確認します。
競技復帰はカレンダーだけで決めず、段階的な練習を経て判断することになるでしょう。
リハビリ中に起こりやすい症状
膝のつっぱり感・曲げにくさ
固定や腫れの影響で、膝前面の皮膚や筋肉、関節周囲の組織が硬くなると、つっぱり感が出ることがあります。
必ずしも靭帯損傷や軟骨損傷が原因とは限りません。
痛みや腫れが増える場合は、負荷と方法を見直しましょう。
力が入らない・踏ん張れない
痛み、腫れ、固定によって大腿四頭筋の働きが低下すると、膝折れや脱力感が出ることがあります。
同時に固定により神経系の反応も遅くなるため、力を入れるまでの時間がコンマ何秒遅れて踏ん張れないこともあるでしょう。
転倒を防ぐため、必要に応じて杖や装具を使用しながら筋力を回復させます。
腫れや熱感が続く
リハビリ後に一時的に腫れることはありますが、腫れが日ごとに強くなる、赤みや発熱を伴う、ふくらはぎが痛む、息苦しさがある場合は、感染症や血栓症なども考慮して速やかに医療機関へ連絡してください。
超音波治療・酸素ルーム・加圧トレーニングについて
当院では状態に応じて、低出力パルス超音波(LIPUS)、酸素ルーム、加圧式トレーニングをご案内しています。
ただし、これらは固定や手術、医師による画像評価、基本的なリハビリに代わるものではありません。
また、すべての骨折が一定の割合で早く治ると断定することはできませんので予めご了承ください。
LIPUSは骨折の種類や治癒状況によって適応が異なります。
酸素ルームや加圧式トレーニングも、体調や既往歴、患部の状態を確認したうえで実施します。
利用を希望される方は、整形外科での診断内容や画像所見をお知らせください。
→手や足の骨折を早く治す方法は?骨の回復を早める秘訣を教えます
→加圧トレーニングの効果とは?実は良いことだらけなのをご存知ですか?
早めに整形外科を受診したほうがよい症状
- 膝に明らかな変形や強い腫れ・内出血がある
- 体重をかけられない、膝を自力で伸ばせない
- しびれ、感覚低下、足先の冷たさや皮膚色の変化がある
- 傷が深く、骨折部とつながっている可能性がある
- リハビリ後に痛みや腫れが急激に悪化した
- 発熱、傷口からの排液、ふくらはぎの強い痛み、息苦しさがある
膝蓋骨骨折が疑われる場合は、接骨院だけで判断せず、整形外科でレントゲンなどの画像検査を受けてください。
当院でも状態を確認し、必要に応じて整形外科をご紹介します。
よくある質問
膝蓋骨骨折はどのくらいで治りますか?
日常生活への復帰は3〜6か月程度がひとつの目安ですが、骨折のずれ、手術の有無、年齢、合併症、必要な活動レベルによって異なります。
骨がついた時期と、筋力や動作が元に戻る時期も同じではありません。
固定が外れたらすぐ普通に歩けますか?
すぐに通常歩行へ戻れるとは限りません。
膝の可動域、大腿四頭筋の筋力、患部や患部周辺の痛み、腫れ、膝への荷重許可を確認し、杖や装具を使いながら段階的に進めていくことになります。
膝は自分でたくさん曲げたほうが早く柔らかくなりますか?
強く曲げる、回数多く動かせば早く回復するわけではありません。
骨折部や固定材料に負担をかける可能性があるため、指示された角度と方法を守りましょう。
リハビリで痛みが出ても続けるべきですか?
軽い張り感と、鋭い痛みや腫れの増加は区別が必要です。
運動後から翌日に症状が強くなる場合は負荷が過大な可能性があるため、中止または調整し、担当者へ相談してください。
まとめ
膝蓋骨骨折のリハビリでは、骨折部を守りながら膝の可動域と大腿四頭筋の筋力を段階的に取り戻すことが重要です。
歩行、階段、仕事、スポーツへの復帰時期は、「受傷から何週間たったか」だけでは決められません。
レントゲンなどで骨の状態を確認し、痛み、腫れ、可動域、筋力、動作の安定性を評価しながら進めていきます。
自己判断で膝を深く曲げたり、荷重や筋トレを急に増やしたりせず、医師やリハビリ担当者の指示を守りましょう。
膝蓋骨骨折後のリハビリや施術について疑問がある方は、LINEからお気軽にご相談ください。
友だち追加(ご予約はこちらから)
参考情報
- 日本整形外傷学会「膝蓋骨骨折」
- AAOS OrthoInfo「Patellar Fractures」
- NICE「Low-intensity pulsed ultrasound to promote fracture healing」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。診断や治療、リハビリの開始・変更は、担当医の指示に従ってください。
